2008-01-01から1年間の記事一覧

シネマ1*運動イメージ

法政大学出版局からやっと、待ちわびたドゥルーズ『シネマ1*運動イメージ』*1が6月下旬に刊行される。『シネマ2』刊行時の予告から1年遅れたが、その分楽しみも増幅された。 シネマ2*時間イメージ (叢書・ウニベルシタス)作者: ジルドゥルーズ,宇野邦一,…

山のあなた 徳市の恋

清水宏のDVD-BOX『山あいの風景』(松竹、2008)について拙ブログ(2008-04-26)で言及したが、その中の『按摩と女』(1938)を70年ぶりにカヴァー*1した作品『山のあなた 徳市の恋』(2008)を観たので、その感想を書いておきたい。 清水宏監督作品 第一集 …

内村剛介ロングインタビュー

陶山幾朗編『内村剛介ロングインタビュー 生き急ぎ、感じせく―私の二十世紀』(恵雅堂出版、2008.5)*1を、入手後一気に読了した。内村剛介『生き急ぐ―スターリン獄の日本人』との出会いは、「シベリア抑留」体験の極北であり、衝撃的であった。 生き急ぐ―ス…

ロベルト・ムージル

古井由吉『ロベルト・ムージル』(岩波書店、2008.2)を、本書のなかで言及されている古井氏の翻訳による『愛の完成』『静かなベロニカの誘惑』の二編と、川村二郎訳『トンカ』を併読しながら読了した。 ロベルト・ムージル作者: 古井由吉出版社/メーカー: 岩…

文学鶴亀

武藤康史『文学鶴亀』(国書刊行会、2008.2)を少しづつ読み、年譜・書誌・辞書史等の地味な仕事をこなしてきた武藤氏ならではの、硬質な文体と内容に驚嘆しつつ読み続けている。 文学鶴亀作者: 武藤康史出版社/メーカー: 国書刊行会発売日: 2008/02/01メディ…

漱石

三浦雅士『漱石 母に愛されなかった子』(岩波新書、2008.4)読了。三浦雅士の前著『出生の秘密』(講談社、2005.08) のテーマの延長上で、対象を漱石に絞って考察した小冊子となっている。 漱石―母に愛されなかった子 (岩波新書)作者: 三浦雅士出版社/メーカ…

早稲田文学

『早稲田文学』第十次創刊号を入手した。篠山紀信撮り下ろしの川上未映子のグラビア写真が冒頭にあり。川上未映子『戦争花嫁』は、「戦争花嫁」という言葉を「意味のない言葉は人を傷つけない」用法として、言語的な限界に挑戦する不思議な作品だ。 早稲田文…

本の本

斎藤美奈子さんの書評集『本の本』(筑摩書房, 2008.3)を入手。730頁プラス8頁の索引(書名、著者)が付いている。目次から主題別に見て行くより、索引から目的の本の書評を読むという読み方ができるところが良い。 本の本―書評集1994‐2007作者: 斎藤美奈子…

清水宏三本目『簪(かんざし)』(1941)も、舞台は温泉場。団体客の到着から始まり、按摩を呼ぶというシチュエーションは、『按摩と女』の設定を引き継ぐような雰囲気であり、気難しい教授・斎藤達雄、お人好しな日守新一とその妻、戦傷帰還兵・笠智衆など…

按摩と女

同じDVD−BOXに収録されている『按摩と女』(1938)は、盲目の按摩・徳市(徳大寺伸)と福市(日守新一)が二人で峠の山道を歩きながら、向こうからくる子供の人数を当てるゲームに興じたり、ハイキングの学生たちより早く歩くことに喜びを見出しながら、…

有りがたうさん

清水宏のDVD『清水宏監督作品第一集 山あいの風景』(松竹)を入手。早速、『有りがたうさん』(1936)を観る。定期路線(寄合)バスの運転手(上原謙)が、山あいの道で出会う人々に「ありがとう」の声をかけるので、「有りがたうさん」と呼ばれている。…

実物を見ておきたい絵画

グリーナウェイ『レンブラントの夜警』に触れたとき、この絵画の実物を見ていないことが切実になった。人生の時間は限られている。内村剛介『見るべきほどのことは見つ』(恵雅堂出版,2002.6) という書物があったが、本に関しては「読むべき本は読んだ」と…

レンブラントの夜警

ピーター・グリーナウェイ監督最新作『レンブラントの夜警』(Nightwatchnig, 2007)を観る。『英国式庭園殺人事件』もそうであったように、グリーナウェイは絵画への造詣が深い。また、『コックと泥棒、その妻と愛人』では、レストランの壁にはたしかフラン…

海外の長編小説ベスト100

『考える人』24号は、特集「海外の長編小説ベスト100」、選者129名によって選出されたもの。 考える人 2008年 05月号 [雑誌]出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2008/04/04メディア: 雑誌購入: 3人 クリック: 63回この商品を含むブログ (40件) を見る 1.ガ…

バートルビーと仲間たち

それは朝のラジオ番組、「森本毅郎スタンバイ!日本全国8時です」3月25日、火曜日のゲスト・荒川洋治氏による本の紹介によって始まった。ハーマン・メルヴィルに『バートルビー』という作品を知る。書記バートルビーの導きにより、書かないあるいは書けなく…

マイ・ブルーベリー・ナイツ

ウォン・カーウァイがアメリカ映画に進出した??台詞が英語で、俳優もアメリカ・イギリス生まれ。前作『2046』(2004)が五年かけて製作したのに比べて、『マイ・ブルーベリー・ナイツ』(2007、仏=香港)はニューヨ−クとメンフィスでのロケ撮影を短期間に…

小津ごのみ

中野翠『小津ごのみ』(筑摩書房、2008.2)は、『ちくま』連載中から気になっていた。いずれ一冊の本になることを待つことにした。小津安二郎について何かを書いておきたいという願望は、小津ファンなら誰もが考えることだ。しかし、こと小津に関しては夥しい…

しあわせな孤独

スサンネ・ピア『ある愛の風景』に衝撃をうけたため、前作『しあわせな孤独(Open hearts, 2002)をDVDにて観る。結婚を控えた恋人たち、セシリ(ソニア・リクター)とヨアヒム(ニコライ・リー・コス)が車のなかで別れを惜しみ、ドアの外に出たヨアヒムが一…

ある愛の風景

デンマーク映画の女性監督スサンネ・ピア『ある愛の風景』(Brothers, 2004)を観る。平凡な日常と、戦争という極限状況に置かれた男の変貌は、観るものに圧倒的な印象を残す。手持ちキャメラとクロースアップの多用は、ラース・フォン・トリアーたちが推進…

とらんぷ譚

ヌーヴェル・ヴァーグのトリュフォーやゴダールたちが リスペクトしている作家サッシャ・ギトリ『とらんぷ譚』(1936)がDVD発売された。名前のみ繰り返し聞いている伝説の作家・映画監督にして劇作家。シネフィルなら見逃せないフィルムだ。 とらんぷ譚 …

乳と卵

川上未映子『乳と卵』読了。芥川賞受賞作でいま旬の評判小説。『文藝春秋』2008年3月号にて「受賞者インタビュー」とともに読む。読み始めると、文体に関西弁が多用されており、ワンセンテンスの異様な長さは古風な、明治の小説を想起させる。それもそのはず…

みすず2007年読書アンケート

恒例の『みすず』2008年1・2月号の「2007年読書アンケート」を通読する。本の収穫は、通常年末の各種雑誌あるいは新聞等に掲載されるが、ほとんど文学・社会科学関係が多く、自然科学まで含めた専門分野まで踏み込んだ読書アンケートは唯一『みすず』のみで…

たぶん悪魔が

キャメラは人物の足や手や体の部分を捉えたシーンが多く、画面の全体が見えないのがロベール・ブレッソン映画(シネマトグラフ)の特徴であることは彼のフィルム一本を観ればわかる。1月末に、ロベール・ブレッソンDVD-BOXが発売され、これまで観る機会のな…

超越意識の探求

コリン・ウィルソンといえば何をおいても『アウトサイダー』(紀伊国屋書店、1957)であろう。その後、オカルトだの神秘主義だの多数の著作が書かれたが、アウトサイダーサークル以外では『賢者の石』(東京創元社、1971)しか読んでいない。 アウトサイダー…

高山宏の執筆予定

高山宏氏の「今年の執筆予定」(『出版ニュース』2008年1月上・中旬号)から以下引用する。超人高山宏のつくりかた (NTT出版ライブラリーレゾナント)作者: 高山宏出版社/メーカー: NTT出版発売日: 2007/08/01メディア: 単行本購入: 4人 クリック: 55回この商…

酔いどれ詩人になるまえに

チャールズ・ブコウスキーの作家以前の生活を描いた、ベント・ハーメル監督『酔いどれ詩人になるまえに』(Factotum, 2005)を観る。ブコウスキー作品ではチナスキー名の主人公をマット・ディロンが演じている。肉体労働者風の体格や風貌はチナスキー=ブコウ…

知のアーカイブ

ウェブの世界は進展著しく、Web20などといわれているけれど、知の集積の在り方が問われている。例えば、Googleによるあらゆる図書のデータベース化は、かつての図書館における役割を、検索エンジンが代替しようと試みる壮大な実験といえよう。 実際、小規模…

誰も知らない世界と日本のまちがい

松岡正剛『誰も知らない 世界と日本のまちがい』(春秋社、2007)読了。本書によってやっとというべきか、遅ればせながら松岡氏の「編集工学」の意図を読み取ることができた。 誰も知らない 世界と日本のまちがい 自由と国家と資本主義作者: 松岡正剛出版社/…