2009-01-01から1年間の記事一覧

本の収穫2009

今年の収穫、書籍の部。 村上春樹の新作は、話題が先行しながら、文学作品として異例の大ベストセラーになった。◎村上春樹『1Q84』(新潮社、2009)1Q84 BOOK 1作者: 村上春樹出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2009/05/29メディア: 単行本購入: 45人 クリ…

映画ベストテン2009年

今年の収穫、映画の部。今年映画館で観た映画は91本。100本には届かないが、目標を80本に下げたのでクリアしたことになる。邦画の人気が高いといわれているが、やはり今年も外国映画に圧倒された。映画の3D化は、本質的な解決にはならない。歴史が証明する…

ラス・メニーナス

■ベラスケス「ラス・メニーナス」ほか(プラド美術館)フーコーの著書『言葉と物』の冒頭の口絵を飾って以来、「ラス・メニーナス」は必見の絵画となっていた。眼前に観たときは、ただ立ち尽くすのみ。 言葉と物―人文科学の考古学作者: ミシェル・フーコー,M…

精神

想田和弘氏の観察映画第二弾『精神』(2009)を観ると、健常者と患者との見極めが難しい。病気により自己の哲学を詩的に形成している人がいる。患者への偏見を払拭するためには必見の「観察映画」。想田監督のメッセージを引用する。 僕の前作『選挙』(観察…

嗚呼 満蒙開拓団

羽田澄子『嗚呼 満蒙開拓団』(2008)に衝撃を受ける。旧日本政府による満州開拓団の積極的なプロパガンダは何だったのか。敗戦時の引き上げは、関東軍や満鉄関係者とその家族中心であり、開拓民家族は見棄てられた。「中国残留孤児」とは、日本の植民地政策…

路上のソリスト

ジョー・ライト『路上のソリスト』(米、2009)路上のソリスト [DVD]出版社/メーカー: ジェネオン・ユニバーサル発売日: 2009/10/23メディア: DVD クリック: 24回この商品を含むブログ (24件) を見る

懺悔

テンギス・アブラゼ『懺悔』(旧ソ連、1984)懺悔 [DVD]出版社/メーカー: アップリンク発売日: 2009/11/06メディア: DVD クリック: 19回この商品を含むブログ (8件) を見る

ディア・ドクター

西川美和『ディア・ドクター』(日本、2009)ゆれる [DVD]出版社/メーカー: バンダイビジュアル発売日: 2007/02/23メディア: DVD購入: 3人 クリック: 216回この商品を含むブログ (600件) を見る

加藤周一が書いた加藤周一

鷲津力編『加藤周一が書いた加藤周一』(平凡社、2009)は、冒頭から順を追って読み始めると、一人の知識人の生涯の物語として一種自伝的に読むことができる。加藤周一が書いた加藤周一―91の「あとがき」と11の「まえがき」作者: 加藤周一,鷲巣力出版社/メー…

金融危機後の世界

ジャック・アタリ著、林昌宏訳『金融危機後の世界』(作品社、2009)は、アメリカ発の金融危機がどのように起きたか、そして、今後どう対応すれば、資本主義の崩壊を阻止できるのかが、きわめて明解に書かれてあり、経済学専門ではない者にもじつに分かりや…

13日間で「名文」を書けるようになる方法

高橋源一郎『13日間で「名文」を書けるようになる方法』(朝日新聞出版、2009)。高橋氏は「あとがき」で、学生が提出した文章の添削を一切しないことの理由を次のように記している。 10年以上前のことだ。わたしは、小学校5年生たちに「文章」を教えた…

今月の読書と映画(2009年9月)

今月に読了した本は3冊で(但し読みかけの本は外にもある)きわめて少ない。映画は、スクリーンで観た映画が5本。以下に列挙する。■読書

ロシア革命アニメーション

ロシアのアニメといえば、ユーリ・ノルシュテイン『話の話』などが想起されるが、ソ連時代のプロパガンダとして作られたアニメーションが、その制約の中で実に、工夫がこらされ、あるときは前衛的であり、また斬新な映像やきわめて刺激的な表現方法をとって…

ヒッチコックに進路を取れ

山田宏一・和田誠共著『ヒッチコックに進路を取れ』(草思社、2009)は、ヒッチコック映画のみどころについて語り尽くされている。もちろん、トリュフォーがヒッチコックにインタビューした古典ともいうべき『定本 映画術』(晶文社、1991)に殆どが語れれて…

かたち三昧

東京大学出版会のPR誌『UP』に5年間(63回)連載された高山宏の「かたち三昧」が、同時期に書かれた漱石論を付し、『かたち三昧』(羽鳥書店、2009)として出版された。聞き馴れない書店名だが、東大出版会を退職し、書肆経営に第二の人生をスタートさせ…

レスラー

タイトルバックで80年代のプロレスのポスターが映され、人気絶頂であったランディ(ミッキー・ローク)について中継風に語られる。映画はその20年後から始まる。控え室に背中を向けてすわる中年のプロレスラー、彼の背中をキャメラは執拗に追って行く。…

1Q84

村上春樹の新作『1Q84』(新潮社、2009)が、出版界に「村上特需」をもたらしているようだ。発売開始以来の増刷で、120万部の売上は出版界にとって、まさしく「特需」になっていると報道されている。不況の出版界にあって、村上春樹の存在は大きい。 1Q8…

映画365本

宮崎哲弥『映画365本』(朝日選書、2009)が刊行された。宮崎氏は、かつて同じシリーズで『新書365冊』を上梓している。新書本についての言説は明解そのものであった。しかしながら、宮崎氏は『映画365本』の「はじめに」のなかで、「本書は所謂シネフィル(…

日本語で読むということ

以上の文を書いたところで、二冊目の『日本語で読むということ』(筑摩書房、2009)も読了した。二冊を合わせて読むと、水村美苗という人の思考法や言語観が浮かび上がってくる。女性ならではの鋭い感覚。たんなる「女流文学者」とは一線を画する<小説家=…

日本語で書くということ

水村美苗が『日本語が亡びるとき』(筑摩書房、2008)を出版したのは、二分冊となった『日本語で読むということ』『日本語で書くということ』(筑摩書房、2009)に収められたエッセイや評論の「序文」を書いているうちに、次第に長くなり序文が独立して『日…

ジャンヌ・ダルク裁判

ジャンヌ・ダルク裁判に関する映画の代表的なものとして、カール・Th・ドライヤー『裁かるるジャンヌ』(1928)と、ロベール・ブレッソン『ジャンヌ・ダルク裁判』(1962)の二本がある。 裁かるゝジャンヌ クリティカル・エディション [DVD]出版社/メーカー…

柄谷行人政治を語る

『柄谷行人政治を語る』(図書新聞、2009)を一気に読了した。同時期に、宮台真司『日本の難点』(幻冬舎、2009)を読む。日本の思想・文学を先導してきた柄谷行人が「政治」について語ることばを読むと、世界史的視点で「政治」を語る柄谷の姿勢に、なぜ『…

グラン・トリノ

クリント・イーストウッド『グラン・トリノ』(2008)は、最後の主演作として、見事に俳優人生に決着をつけている。感度的なラストシーンを持つ傑作だ。今年79歳になるイーストウッドは、『ローハイド』のテレビ俳優として日本で知られ始めた。かれがイタリ…

おくりびと

『朝日新聞(大阪版)』2009年4月6日朝刊に、『「おくりびと」に危機感』と題して、全日本仏教会会長の松長有慶氏の談話が掲載されていた。内容が気になったので、少し感想を記しておきたい。 おくりびと [DVD]出版社/メーカー: セディックインターナショナ…

ルポ貧困大国アメリカ

ハリウッド、すなわちアメリカ社会では「アメリカンドリーム」の実現がきわめて困難であるからこそ、インド「ボリウッド映画」で、スラム出身の青年がまさしく「アメリカンドリーム」実現の代替として、アカデミー賞協会が、『スラムドッグ$ミリオネア』を…

スラムドッグ$ミリオネア

ダニー・ボイル監督、アカデミー賞作品・監督賞受賞の『スラムドッグ$ミリオネア』(2008)を公開初日に観た。『トレインスポッティング』(1996)で進出してきたイギリス人監督は、以後、ハリウッドシステムの中でいまひとつ、本来の実力が出てないなと感…

図書館法施行規則を改正する省令

2009年4月2日付けで、文部科学省は司書科目の改正の省令告示にあたって、再度、パプリック・コメントを募集している。締切は4月22日。個人的な意見も受け付け可であり、公共図書館関係の方は、ぜひ現場の意見を提案されることを期待したい。 案件番号1850003…

ミュージアムの思想

松宮秀治『ミュージアムの思想』(白水社、2009)が新装版として3月に発売された。もちろん、柄谷行人が絶賛した『芸術崇拝の思想』(白水社、2008)の好評に応えて、5年前に出版された本に新たな「あとがき」を付して再版されたものである。 新装版 ミュー…

無趣味のすすめ

村上龍『無趣味のすすめ』(幻冬舎、2009)、購入した日に読了できる分量。総論反対、各論賛成という刺激的な本だ。 無趣味のすすめ作者: 村上龍出版社/メーカー: 幻冬舎発売日: 2009/03/26メディア: 単行本購入: 4人 クリック: 142回この商品を含むブログ (…

アンナ・マクダレーナ・バッハの年代記

ストローブ=ユイレの作品を観ると、緊張感が伝わってくる。最初に見たのがビデオ『アンナ・マクダレーナ・バッハの日記』(1967)であり、レオンハルト扮するバッハの演奏や、ケーテン候役のアーノンクールなど、本格的な古楽器を使用して演奏されるバッハ…