しあわせな孤独


スサンネ・ピア『ある愛の風景』に衝撃をうけたため、前作『しあわせな孤独(Open hearts, 2002)をDVDにて観る。結婚を控えた恋人たち、セシリ(ソニア・リクター)とヨアヒム(ニコライ・リー・コス)が車のなかで別れを惜しみ、ドアの外に出たヨアヒムが一瞬のうちに事故に遭遇する。瀕死の状態から意識から回復するが、首から下、ほぼ全身不随となる。


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事故を起こした車には母娘二人が乗っていた。母マリー(パプリカ・スティーン)と娘スティーネ(スティーネ・ビェルガード)は、それまで口喧嘩していたため事故に動揺する。


ヨアヒムが入院した病院にいた医師ニルス(マッツ・ミケルセン)は、呆然として待合室にいるセシリに出会う。全身不随になったヨアヒムは、セシリに冷たく当たる。セシリは医師ニルスに慰めを求める。加害者の夫であるニルスにとって、セシリを優しくいたわることを義務と感じる。それが彼女への激しい恋に変貌してゆくには時間はかからなかった。


セシリとマリーには3人の子供がいる。娘スティーネのほかに小さな男の子二人。特に、スティーネは恋人にふられたばかりで、父親とセシリの関係に微妙に反応する。映画のなかで不倫が描かれるのはよくあること。しかし、家族全員を巻き込んでしまうケースは少ない。


ヨアヒムの容態が安定し、再びセシリとの愛の復活を望むと、それを待っていたかのようにセシリは、恋人の位置を取り戻す。一方、家を出てしまったニルスは己れの恋の激しさに懊悩する。


戻るべき場所に、四人はそれぞれ苦い思いを抱きながらも、緩やかな回復の兆しをみせながら、戻って行くことを暗示しながら、映画は唐突に終わりを迎える。


デンマークの女性監督スサンネ・ピアへの評価は、二本のフィルムを観ただけで、その力量がわかるほど、才媛といわざるを得ない。既に、アメリカで『ある愛の風景』と『しあわせな孤独』のリメイクが決まり、更に、ハリウッドから招待されて映画を撮る予定だとか。世界から才能ある監督を集め、外国作品のリメイクによって生き延びているのが、ハリウッドという虚像である。


デンマーク映画

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