2020-01-01から1年間の記事一覧

溝口健二『残菊物語』とフリッツ・ラング『スピオーネ』は必見の映画だ

見るレッスン 映画史特別講義 『ゴダール マネ フーコー 増補版』(青土社,2019)の刊行から、2020年に入り、『言葉はどこからやってくるのか』(青土社,2020)や『アメリカから遠く離れて』( 河出書房新社,2020)が矢継ぎ早に刊行され、ついに新書版で『見…

今年は外国及び日本映画とも女性主演映画がベスト1となった

映画ベストテン2020 今年2020年は、コロナ禍のため、3月から5月まで映画館に行けなかった。例年に較べてスクリーンで観た映画は少なく、47本だった。目標が80本なのだが、新型コロナウイルスを回避するため、自宅巣ごもりの一年となった。 映画館で観た映画…

パティニール画集の出版を期待したい

三つの庵 ソロー、パティニール、芭蕉 クリスチャン・ドゥメ著『三つの庵 ソロー、パティニール、芭蕉』(幻戯書房,2020)は、隠遁生活を求めていたものにとって、きわめて刺激が強いタイトルだ。タイトルと出版社をみて購入することはあまりないことだが、…

古井由吉の作品が預言になっていることに驚く

#古井由吉 われもまた天に 古井由吉氏の遺作『われもまた天に』(新潮社,2020)を読む。 われもまた天に 作者:由吉, 古井 発売日: 2020/09/28 メディア: 単行本 「雛の春」「われもまた天に」「雨あがりの出立」「遺稿」の四編から成る。 冒頭の「雛の春」…

坪内祐三は、シブく古くさいエッセイストとして出発し、少年時代に回帰した

#坪内祐三 玉電松原物語 坪内祐三の最後の連載もの「玉電松原物語」が2019年『小説新潮』五月号からであり、2020年1月突然の死によって中断された。今回、遺作として『玉電松原物語』が、新潮社から発売された。現物を入手。 玉電松原物語 作者:坪内祐三 発…

「品川猿」「品川猿の告白」は「ラガー」ではなく「黒ビール」で読み解く

一人称単数 村上春樹の6年ぶりの短編小説集『一人称単数』(文藝春秋,2020)を、遅ればせながら読了した。 一人称単数 (文春e-book) 作者:村上 春樹 発売日: 2020/07/18 メディア: Kindle版 八編の短編が収録されているが、中でも特筆すべきは「品川猿の告…

高山宏の翻訳書は歴史に残る快挙、更に『ガリヴァー旅行記』が一冊加わる。

アリスに驚け 高山宏『アリスに驚け アリス狩りⅥ』(青土社,2020)が、 発売予告から10年以上の時を経て刊行された。 アリスに驚け 作者:宏, 高山 発売日: 2020/09/26 メディア: 単行本 目次の構成は次のとおり。第1部 アリスに驚け第2部 *メルヴィル・…

草森紳一・副島種臣・石川九楊

蒼海 副島種臣―全心の書―展 図録 蒼海副島種臣 全心の書 草森紳一が、李賀(長吉)とほぼ同じ分量の原稿を書き残している副島種臣の「書」に関する図録・佐賀県立美術館編『没後100年記念 蒼海 副島種臣―全心の書―展 図録』(佐賀新聞社,2007二刷)を入手し…

草森紳一の小説を超える雑文集『副島種臣(仮)』の出版を期待する

記憶のちぎれ雲 草森紳一というマエストロに遭遇してしまった。かつて文春新書の『随筆 本が崩れる』に拙ブログで触れたことがある。2005年10月24日に記載しているが、草森紳一氏についてほとんんど知らなかったことを、『随筆 本が崩れる』(中公文庫,2018…

文壇「坪内組」ならこう言うぜ、『坪内祐三文学年表』出版もあるでよ

東京タワーならこう言うぜ 坪内祐三いうところのヴァラエティ・ブック『東京タワーならこう言うぜ』(幻戯書房,2012)を入手した。この種の本は『古くさいぞ私は』(晶文社,2000)以来のことである。この間12年間に、坪内氏の姿勢は文学や書店・古書店など…

坪内祐三にサヨウナラ、はまだ早い

みんなみんな逝ってしまった、けれど文学は死なない。 坪内祐三追悼特集雑誌が二冊刊行された。『本の雑誌2020年4月「さようなら、坪内祐三」』(本の雑誌社,2020)と『ユリイカ総特集坪内祐三』(青土社,2020)だ。 本の雑誌442号2020年4月号 発売日: 202…

レスコフは義人の物語作家であるとベンヤミンは評価した

左利き 髪結いの芸術家 群像社のHPを見ていたら、ブーニン作品集4『アルセーニエフの人生』(2019)に刊行されていたことを知り、更に、レスコフの短編集新訳二冊『左利き』『髪結いの芸術家』が、「レスコフ作品集1,2」として2020年2月に発行済である…

彼岸と此岸をつなぐ古井由吉の<ことば>

神秘の人びと 古井由吉の『神秘の人びと』(岩波書店,1996)は、『仮往生伝試文』の西洋版であり、私は、中世西洋の修道院の人びとによる神秘体験を興味深く読んだ。マルティン・ブーバー編纂の説教集や、マイスター・エックハルトの説教集のドイツ語訳を、…

古井由吉氏の訃報は、近現代文学の終わりを告げる

古井由吉氏の訃報 新型コロナウイルスのパンデミック的感染拡大により、報道はこの武漢発生のウイルス一色となっている。この間、日常的な外出を控え、読書に集中していた。 古井由吉の訃報が小さく扱われていた。2月18日他界されたとのこと。 近現代文学の…

パラサイト 笑えないブラックユーモア

パラサイト 半地下の家族 パラサイト アカデミー賞、作品賞、監督賞(ポン・ジュノ)、脚本賞、国際映画賞の4部門を受賞した『パラサイト』を見た。ポン・ジュノ監督作品では、『殺人の追憶』『母なる証明』の2本を見ているが、その過去の作品と比較しても…

坪内祐三の死が気になって

追悼・坪内祐三 1月15日付け『朝日新聞(大阪版)』による坪内祐三氏の訃報に驚いた。享年61歳は若い。60代70代の著作も十分可能だったと思うと残念に思う。坪内氏の著作は、『ストリートワイズ』( 晶文社、1997)以後、『古くさいぞ私は』( 晶文社、2000…