2012-01-01から1年間の記事一覧
「本の収穫2012」の掲載漏れ、前半の書物論関係の本について補足する。 ◎書物の環境論 柴野京子『書物の環境論』(弘文堂,2012-07)書物の環境論 (現代社会学ライブラリー4)作者: 柴野京子出版社/メーカー: 弘文堂発売日: 2012/07/24メディア: 単行本(ソフ…
今年前半は、情報論・書物論関係に集中し、後半は漱石関係の図書(古書)・論文を読んでいたので、新刊本の収穫は多くない。それでも例年どおり、リストアップしてみたい。 まず、次のアンケートを読んでいただきたい。 1.あなたが好意を持たれる政治家は?…
2012年に映画館で観た本数は90本。『キネマ旬報12月下旬号』掲載のベストテン選出用リストに該当する作品の中から選出した。 今年の映画は、想田和弘監督の観察映画第3弾『演劇1』、第4弾『演劇2』に尽きるだろう。脚本家・演出家として著名な平田オリザを…
現在刊行されている最新の『漱石全集』は、直筆原稿主義による編集方針であり、われわれ読者にとって、漱石の自筆原稿をもとにしているから、最も信頼のおける全集である、と考えていた。 倫敦塔・幻影の盾 (新潮文庫)作者: 夏目漱石出版社/メーカー: 新潮社…
また、小川剛生著『中世の書物と学問』(山川出版社,2009)によれば、 中世の書物と学問 (日本史リブレット)作者: 小川剛生出版社/メーカー: 山川出版社発売日: 2009/12/01メディア: 単行本 クリック: 13回この商品を含むブログ (4件) を見る 強烈な個性と…
今年のNHK大河ドラマ「平清盛」で保元の乱から平治の乱へと続くわけだが、その主役たる藤原頼長(山本耕史)と藤原通憲(信西=阿部サダヲ)は、学者・読書家としての一面があることに触れておきたい。 名だたる蔵書家、隠れた蔵書家作者: 佐藤道生出版社…
眼に映る世界―映画の存在論についての考察 (叢書・ウニベルシタス)作者: スタンリーカヴェル,Stanley Cavell,石原陽一郎出版社/メーカー: 法政大学出版局発売日: 2012/04/01メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 18回この商品を含むブログ (8件) を見る スタ…
帝国の残影 ―兵士・小津安二郎の昭和史作者: 與那覇潤出版社/メーカー: エヌティティ出版発売日: 2011/01/14メディア: 単行本購入: 2人 クリック: 20回この商品を含むブログ (15件) を見る 與那覇潤著『帝国の残影、兵士・小津安二郎の昭和史』(NTT出版,20…
小説的思考のススメ: 「気になる部分」だらけの日本文学作者: 阿部公彦出版社/メーカー: 東京大学出版会発売日: 2012/03/22メディア: 単行本購入: 20人 クリック: 302回この商品を含むブログ (12件) を見る 阿部公彦著『小説的思考のススメ』(東京大学出版…
犯罪作者: フェルディナント・フォン・シーラッハ,酒寄進一出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2011/06/11メディア: 単行本購入: 10人 クリック: 112回この商品を含むブログ (106件) を見る フェルディナント・フォン・シーラッハ著,酒寄進一訳『犯罪』(…
2012年本屋大賞を受賞した三浦しをん著『舟を編む』(光文社,2011)は、辞書の編纂をテーマとする「職業小説」であり、10数年を作品の中で描ききっている傑作であった。出版者における辞書編纂部の組織的位置や、言葉へのこだわりなど、このような小説は管…
川本三郎著『白秋望景』(新書館,2012)。 川本氏の著作は、常に細部を丁寧に記述されるので、読みやすい。何故いま「北原白秋なのか」、それは、白秋が筆一本で生活してきたことへの著者の共感に関係しているようだ。 白秋望景作者: 川本三郎出版社/メーカ…
キネマ旬報臨時増刊 映画作家 森田芳光の世界出版社/メーカー: キネマ旬報社発売日: 2012/04/26メディア: 大型本 クリック: 2回この商品を含むブログ (1件) を見る キネマ旬報社から、『キネマ旬報臨時増刊 映画作家 森田芳光の世界』(2012)が発売され、入…
森田芳光の遺作『僕達急行 A列車で行こう』(2012)は、いかにも森田作品らしく、落語(『の・ようなもの』)でメジャーデビュー、鉄道オタクで締めたかたちになった。細部へのこだわりは、本作でも如何なく発揮されている。松山ケンイチ(小町)と瑛太(小…
恐るべき書物だ。ピエール・ルジャンドル著,森元庸介訳『西洋をエンジン・テストする―キリスト教的制度空間とその分析』(以文社,2012)を読み、世界知を読み換える試みの書であることに驚いた。 西洋をエンジン・テストする: キリスト教的制度空間とその…
2012年3月16日未明、戦後最大の「知の巨人」と言われる吉本隆明の訃報が入る。吉本隆明は死なない人だと思っていた。吉本氏を知ったのは、あの名著『共同幻想論』(河出書房新社,1968)であり、1970年第15版が手元にある。 改訂新版 共同幻想論 (角川ソフィ…
罪のスガタ作者: シルヴァーノ・アゴスティ,野村雅夫出版社/メーカー: シーライトパブリッシング発売日: 2009/11/30メディア: 単行本(ソフトカバー) クリック: 9回この商品を含むブログ (8件) を見る 現状では、アゴスティの小説を読むことができる。とり…
イタリア映画といえば、ロベルト・ロセリーニ、ルキノ・ヴィスコンティ、フェデリコ・フェリーニなどの巨匠監督がただちに想起されるけれど、寡聞にしてシルヴァーノ・アゴスティなる作家名を初めて聞いた。 イタリア・インディーズ系の映画監督にして作家で…
テオ・アンゲロプロスの訃報は突然だった。交通事故死。20世紀新三部作を製作中の1月24日、トンネル内で、オートバイにはねられるというアクシデント。残念というか、あまりにも惜しい人を亡くした。『エレニの旅』(2004)公開の後、『第三の翼』(2009)の…