2006-11-01から1ヶ月間の記事一覧

紙屋悦子の青春

黒木和雄の遺作『紙屋悦子の青春』を観る。1945年3月から4月ころの鹿児島県地方の紙屋家の日常風景が、戦争そのものを描くのではなく、戦闘行為を一切画面に出さずに描く手法は、黒木氏の『TOMORROW/明日』(1988)と同様。異なるのは、冒頭病院の屋上で原…

麦の穂をゆらす風

ケン・ローチのカンヌ映画祭・パルムドール受賞作『麦の穂をゆらす風』(The Wind that shakes the barley, 2006)を観る。1920年代のアイルランド独立戦争を、南部コークの人々に焦点をあてて描く。この監督ならではの手法、ドキュメンタリータッチの直球勝負…

戦争映画の差異、リアリズムの頂点

戦争を描きながら、そのスタイルにおいて全く対照的な映画二本を続けて観た。ケン・ローチ『麦の穂をゆらす風』と黒木和雄『紙屋悦子の青春』。戦争に正義はない、しかし・・・

図書館総合展2006

パシフィコ横浜で開催された「第8回図書館総合展」に行ってきた。11月21日(火)開催の二つのフォーラムに参加した。午前中は、「図書館の「壁」〜発展を妨げるものは何か?理想の図書館とは?」と題して、アカデミーヒルズ六本木ライブラリーの小林麻美氏が…

シネマ2*時間イメージ(続)

ジル・ドゥルーズ『シネマ2*時間イメージ』読了。 シネマ2*時間イメージ (叢書・ウニベルシタス)作者: ジルドゥルーズ,宇野邦一,江澤健一郎,岡村民夫,石原陽一郎,大原理志出版社/メーカー: 法政大学出版局発売日: 2006/11/15メディア: 単行本購入: 2人 ク…

小さな町

小山清『小さな町』(みすず書房, 2006.10)読了。 作者は、つつましく普通であることに価値を置き、新聞配達や、北海道で炭鉱夫として働いた経験が、素直な文体で綴られる。『小さな町』は、著者二冊目の小説集であり、冒頭に置かれた「小さな町」をはじめ「…

シネマ2*時間イメージ

ジル・ドゥルーズ『シネマ』の第2巻、『シネマ2*時間イメージ』が宇野邦一ほか訳により、法政大学出版局から刊行された。『シネマ1*運動イメージ』は来年度刊行になる。なぜ、第二巻が先行して出版されたのか。読者としては奇異な印象を禁じえないけれど…

父親たちの星条旗

クリント・イーストウッドが、硫黄島の戦いを二部作で撮ることは早くからニュースとなっていた。最初に公開されたのは『父親たちの星条旗』(Flags of our Fathers, 2006)であり、アメリカ側からみた硫黄島の日米戦争である。 父親たちの星条旗作者: ジェー…

心理

荒川洋治『心理』(みすず書房、2005)が、丸山眞男の三島庶民大学に触発されて書いた「詩」であることを、拙ブログ、「2005-07-04 自由について」において引用紹介した。 その引用部分に続くことば。 初回「明治の精神」(この日 子犬が集まる) 翌年二月か…

丸山眞男回顧談

松沢弘陽・植手通有編『丸山眞男回顧談(上)(下)』(岩波書店,2006.8,10)は、『丸山眞男集』刊行の過程で生まれた時代の証言記録になっている。生前の丸山眞男は、自分の全集を出すことに消極的だった。論文の単行本化すら、極端に禁欲的であったことは…