2005-10-01から1ヶ月間の記事一覧

蔵書を残すこと

一般的には、学者・研究者・趣味人・文士などは、死してのち蔵書を残す。その蔵書構成を見れば、その人の関心領域などを覗うことができる。ある知り合いの学者が亡くなられ、未亡人から蔵書を見せていただいた。学説史研究が専門であったので、当該分野の基…

四月の雪

ホ・ジノは、日本でリメイクされる『八月のクリスマス』と『春の日は過ぎゆく』の二本で知られている。主演にペ・ヨンジュンを迎えた『四月の雪』(原題は「外出」)は、話題が先行しているが、あくまで、ホ・ジノの作品として観るべきフィルムである。 八月…

私の頭の中の消しゴム

コンビニで出会うソン・イェジンとチョン・ウソンは、相手が飲もうとしているコーラの缶をソン・イェジンがいきなり、奪って飲み、缶を相手に返す。同じことが、逆パターンで繰り返される。不倫相手に捨てられた傷心のソン・イェジン、家庭の崩壊と母との葛…

図書館を使い倒す

図書館本というジャンルがあるかどうか寡聞にして知らないけれど、いわゆる図書館学関係の専門書の類ではない、図書館活用のための新書版に、思わぬ収穫を得ることがある。千野信浩著『図書館を使い倒す!』も、この種の図書館本だが、週刊誌記者から見た図…

蝉しぐれ

文四郎(市川染五郎)と小和田逸平(ふかわりょう)が、おふく(木村佳乃)を救うため、決死の覚悟で、楓御殿に向かい、そこで刺客と真剣で闘うシーンがある。あるだけの刀を畳に突き刺し、刀を変えながら刺客たちと、真剣を交えるシーンが迫力ある。はじめ…

リンダリンダリンダ

高校の文化祭前日から最終日、女子高生たちのロックバンドが、ブルーハーツの曲を体育館で演奏するまでのお話。高校生の日常が、きわめて自然に、いかにものリアルさで撮られている。文化祭前日に、前田亜季が廊下を移動しながら、各教室を回るシークエンス…

サイドウェイ

ダメ中年男二人のロード・ムービー。カリフォルニア・ワインの産地巡りの旅。監督は、『アバウト・シュミット』のアレクサンダー・ペイン。小説家志望の中年男マイルスは、『シンデデラマン』でラッセル・クロウのマネージャー役を見事にこなした脇役ポール…

この胸いっぱいの愛を

『黄泉がえり』で感動をもたらした塩田明彦の、タイムスリップもの。2006年から1986年へ。場所は門司。比呂志(伊藤英明)が20年前に過ごした門司へ、出張で飛行機に乗る。到着した門司は、1986年だった。 「泣ける映画」が流行っているらしい。けれども、『…

小林秀雄講演CD

小林秀雄講演(CD)を、毎日一巻づつ購入し、結局五巻を手元に持つことになった。第一巻『文学の雑感』*1、第五巻『随想二題〜本居宣長』*2を聴く。小林秀雄の声は甲高く、志ん生落語を聴く雰囲気があり、講演冒頭の枕のふり方など、見事な落語になってい…

信ずることと考えること

茂木健一郎の『脳と仮想』に導かれて、小林秀雄の講演『信ずることと考えること』と『現代思想について』『本居宣長』をこの連休に聴いていた。小林秀雄の文章は、難解であり、考え抜かれたレトリックを駆使しているので、『本居宣長』やベルグソン論である…

考える人

『考える人』14号を購入した。この種の雑誌はなるべく、購入しないことにしている。第一雑誌として大きすぎるし、分厚いので、保存するのに困る。連載ものは、単行本としてまとめられたとき、購入した方が読みやすい。したがって、購入するには余程の理由が…

ライフ・イズ・ミラクル

ユーゴスラビア崩壊のあと、ボスニア戦争があったことが忘れられようとしている。エミール・クストリッツァ『ライフ・イズ・ミラクル』(2004)は、彼独自の祝祭的空間の中で突然起きた戦争の悲劇を、一種ユーモラスに描きながらも、民族争いのむなしさや、…

ヒランクル

「ドイツ映画祭2005」で上映されたハンス・シュタインビッヒラー『ヒランクル』(2003)を観る機会があった。ドイツ映画のニュードイツ・シネマ以前の60年代に量産された「郷土映画」のジャンルに入るが、新世紀ドイツ映画として、評価を得た作品で、「…