この胸いっぱいの愛を


黄泉がえり』で感動をもたらした塩田明彦の、タイムスリップもの。2006年から1986年へ。場所は門司。比呂志(伊藤英明)が20年前に過ごした門司へ、出張で飛行機に乗る。到着した門司は、1986年だった。


「泣ける映画」が流行っているらしい。けれども、『この胸いっぱいの愛を』は、人生は何のために生きているかを、自らに問いかける優れたフィルムになっている。


1986年の門司には、20年前の自分・ヒロ(富岡涼)がいる。死んだ姉さん和美(ミムラ)は、この時点では、まだ生きている。和美への愛は、比呂志とヒロの二重性によって増幅されている。


同じ飛行機に同乗していたのは宮藤官九郎倍賞千恵子勝地涼。脚本家、ベテラン女優、個性派と、いい味を出していた。


結末に触れるのは避けるが、アメリカ映画で既に用いられた手法で、なるほど、そうだったのかと思わせる。もちろん、途中でタイムスリップした人達は、「人生の幸福」に出会うことになるのはなぜか?という設定で気づく仕掛けにはなっている。


『この胸いっぱいの愛を』公式サイト


この胸いっぱいの愛を (小学館文庫)

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