2021-01-01から1年間の記事一覧

『ボストン市庁舎』がフレデリック・ワイズマン監督二度目のベスト1となった

映画ベストテン2021 2021年映画ベストテンを以下に記して置きたい。そろそろ止め時と思いつつ今年も、コロナ禍を回避して49本を映画館で見た。作家別の作品ランキングなど、DVDや配信ビデオで見直すことも増え、よく映画を見た年だった。 映画ベストテン選出…

コメディ映画の偉大な監督ビリー・ワイルダーの基本は脚本にあった

脚本・監督=ビリー・ワイルダー ~「完璧な人間なんて、ひとりもいない」(『お熱いのがお好き』)~ ~「何よりも重要なのはよい脚本です。映画監督は錬金術師ではない。にわとりの糞から金を作り出すことなんて不可能なのだ。」(ビリー・ワイルダー)~ …

森田芳光の・ような映画監督は今後出てこないだろう

森田芳光全映画 宇多丸、三沢和子編『森田芳光全映画』(リトルモア,2021)を読了した。ひとりの映画作家の全作品を解題する書物は、めずらしいことだ。自主映画から始め、どこの映画会社にも所属せず、助監督修行もなく、自ら自分が撮りたい映画で出発する…

映画監督・川島雄三は時間経過によって普遍性を帯びてきた

花に嵐のたとえもあるぞサヨナラだけが人生だ~川島雄三覚書 川島雄三は、日活に入社し、清水宏、小津安二郎、木下恵介などの実力監督のもとに助監督として働き、『還って来た男』(1944)で織田作之助原作を第一作として監督昇格する。松竹最後の作品が『昨…

中平康は高く「評価」されるべき映画監督だ

中平康の映画作品 中平康は、松竹に入社し、大場秀雄、原研吉、渋谷実等の助監督を務める。その後、1954年に日活再開とともに、日活に移籍。山村聰、田坂具隆、新藤兼人の助監督に付き、『狂った果実』で監督として華々しいデビューを飾る。太陽族映画、ある…

「映画女優の自伝」を読む2(キッチリ山の吉五郎)

私の渡世日記 高峰秀子の自伝、『私の渡世日記』(文春文庫,1998)を読む。 わたしの渡世日記 上 (文春文庫) 作者:高峰 秀子 文藝春秋 Amazon わたしの渡世日記 下 (文春文庫) 作者:高峰 秀子 文藝春秋 Amazon 女優の自伝について、小津安二郎メモの関連とし…

「映画女優の自伝」を読む

女優岡田茉莉子 女優 岡田茉莉子 作者:岡田 茉莉子 文藝春秋 Amazon 小津安二郎のDVDを見直していると、小津映画サイレント期の名優岡田時彦の娘、岡田茉莉子の出演作二本、『秋日和』と『秋刀魚の味』にコメディエンス的女優として出演している。岡田茉莉子…

鈴木清順映画はバイアスを排除した評価をすべきときだ

鈴木清順映画 清純神話といういつの間にか神ががりの映画監督と称される鈴木清順について、ベストテンを記録しておきたい。もちろん、目標はあの淀川長治さんの「映画ベスト1000」にほかならない。 鈴木清順に関する言説はいまや至るところに横溢している。…

エルンスト・ルビッチはドアの開閉によって完璧な映画をつくる

エルンスト・ルビッチに関する二・三の事柄 エルンスト・ルビッチは完璧な映画をつくる。 ルビッチ・タッチと呼ばれる独特のショットのリズム、すべてがジャンル映画、すなわち「恋愛コメディ映画」の名手とされる。ヒッチコックが「サスペンス」に終始した…

『情報の歴史21』の25年ぶりの増補改訂版の出版を寿ぎたい

情報の歴史21 松岡正剛監修『情報の歴史21』(編集工学研究所,2021)を入手した。 25年振りの増補改訂版だ。初版からは30年経過している。 この本にこそ松岡正剛の思想が凝縮している。 情報の歴史21: 象形文字から仮想現実まで 作者:編集工学研究所,イシス…

ジャン・ルノワールの映画は美しく官能的だ

ジャン・ルノワールの映画 『淀川長治映画ベスト1000決定版・新装版』(河出書房新社,2021)をみていて、ジャン・ルノワールについては、次の6本しかあげていないことに気づいた。 淀川長治映画ベスト1000〈決定版 新装版〉 作者:淀川長治 発売日: 2021/04/…

『羊の歌』は加藤周一の<優秀な知的観察者>に共感できるかどうかだ

『羊の歌』 かねてから懸案だった加藤周一『羊の歌』正・続編および、『「羊の歌」その後』を読む。かつて所持していた新書二冊は、所在不明のため購入しなおした。2014年に改版され活字が大きくなっていた。 羊の歌―わが回想 (岩波新書 青版 689) 作者:加藤…

トルストイは『セルギー神父』が経験する聖人への段階を示した(宗教批判的に)

セルギー神父 トルストイ原作の映画『セルギー神父』(1978)は、イーゴリ・タランキン監督による作品で、セルゲイ・ボンダルチュクが主演した、実に、19世紀ロシア社会のロシア正教という一種異端のキリスト教世界と現世のかかわりを、淡々と描く傑作であっ…

ジャック・リヴェットは舞台劇を導入し映画を再生させた

映画は20世紀最大の芸術である 新型コロナウィルスの世界的蔓延によって、パンデミックとなり、芸術活動全般が制御されている。アメリカの爆発的感染者の驚くべき増大により、ブロードウェイや、ハリウッド系の映画館が閉鎖されている。従来のように、映画が…

『裁かるるジャンヌ』以前のドライヤーのフィルムは「情熱」の現れだ!

『ミカエル』ほか・カール・Th・ドライヤーのサイレント作品 カール・Th・ドライヤーのサイレント作品6本を観た。DVD再生装置に不具合が起きたためPCにて再生した。結果として、サイレント映画を見るには、PCが好ましかった。観た順とは異なるが、製作順に…