2013-01-01から1年間の記事一覧

本の収穫2013

例年に従い、2013年「本の収穫」をあげておきたい。 映画と異なり、ベスト10ではなく、あくまで収穫である。 ◎一般図書関係○國分功一郎『ドゥルーズの哲学原理』岩波書店,2013 ○國分功一郎『来るべき民主主義 小平市都道328号線と近代政治哲学の諸問題』幻…

漱石関係文献の収集3年

漱石に関心を持っていたのは、学生時代、代表作とりわけ、前期三部作と後期三部作および『明暗』を読んだことに遡る。以後、江藤淳、柄谷行人、蓮實重彦、石原千秋など、折に触れて、関係文献を読んできた。しかしながら、ここ3年間は、集中的に漱石文献を蒐…

映画ベストテン2013年

恒例に従って、『キネマ旬報』2013年12月下旬号掲載の「ベストテン選出用作品リスト」をもとに、私が映画館・スクリーンで見た映画を選出した。なお、今年は久々に100本を超え、114本観た。 【日本映画】1)「ペコロスの母に会いに行く」(森崎東) 2)「かぐ…

本の逆襲

内沼晋太郎『本の逆襲』(朝日出版社,2013)は、きわめて刺激的な本だ。 本の逆襲 (ideaink 〈アイデアインク〉)作者: 内沼晋太郎出版社/メーカー: 朝日出版社発売日: 2013/12/11メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログ (29件) を見る 新し…

特定秘密保護法案

現在国会で審議中の「特定秘密保護法案」について、まず内田樹氏のブログ「石破氏の発言について」より引用する。 彼(石破茂)の党が今採択しようとしている法案には「特定有害行為」の項で「テロリズム」をこう規定しているからだ。「テロリズム(政治上そ…

街場の憂国論

内田樹『街場の憂国論』(晶文社,2013)は、内田氏による「街場」シリーズだが、きわめて常識的な所論を展開しながら、実に説得的である。 街場の憂国論 (犀の教室)作者: 内田樹出版社/メーカー: 晶文社発売日: 2013/10/05メディア: 単行本この商品を含むブ…

ビブリオバトル

ビブリオバトルという言葉を、寡聞にしてつい最近まで知らなかった。早速、谷口忠大著『ビブリオバトル 本を知り人を知る書評ゲーム』(文春新書,2013)を読み、公式サイトを確認しながら、情報社会における新たな試みが始まっていたことを知った。 ビブリ…

安部公房とわたし

安部公房とわたし作者: 山口果林出版社/メーカー: 講談社発売日: 2013/07/31メディア: 単行本この商品を含むブログ (19件) を見る 女優・山口果林の自伝『安部公房とわたし』(講談社,2013)を読む。以前、安部公房氏の娘・安部ねりによる『安部公房伝』(…

世界の全ての記憶

アラン・レネ/ジャン=リュック・ゴダール 短編傑作選 [DVD]出版社/メーカー: 紀伊國屋書店発売日: 2001/05/25メディア: DVD購入: 1人 クリック: 51回この商品を含むブログ (29件) を見る 老婦人を演じたエマニュエル・リヴァから、アレン・レネが戦後の広島…

愛、アムール

愛、アムール [DVD]出版社/メーカー: 角川書店発売日: 2013/09/06メディア: DVD クリック: 2回この商品を含むブログ (15件) を見る ミヒャイル・ハネケ『愛、アムール』(2012)をやっと見ることができた。老夫婦が迎える、老いと病気。妻が病に倒れ、自宅療…

熱風―「憲法改正」

あす、7月21日の参議員選挙の投票結果予測では、自公が圧倒的勝利と予想されている。アベノミクスが全面に押し出され、成長戦略は官僚作文による公共事業など、旧来の自民党体質が復活するのみで、国民生活が良くなる保証などどこにもない。 本へのとびら――…

芸術新潮「漱石の眼」

芸術新潮 2013年 06月号 [雑誌]出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2013/05/25メディア: 雑誌この商品を含むブログ (1件) を見る 5月末刊行の『芸術新潮』6月号、『Kotoba』第12号は「夏目漱石を読む」と、このとことろ漱石特集が続いている。漱石特集は今に始…

メディアとしての紙の文化史

ローター・ミュラー著、三谷武司訳『メディアとしての紙の文化史』(東洋書林、2013.5)は実に刺激と示唆に富んだ書物である。現在、プロローグとエピローグ及び、原克氏の「解説」を一読しただけだが、これはただならぬ書物である。メディアとしての紙の文…

哲学探偵ベルクソンの事件簿

ベルクソンの哲学を解説的に引用しながら、事件を解決する探偵小説、瀬名織江『哲学探偵ベルクソンの事件簿』(彩流社,2013)を読了した。古今東西の著名人を探偵に登場させる小説は多いが、「哲学探偵」は「ベルクソン」が初めてではないだろうか。いま、フ…

第85回アカデミー賞作品

この連休になってやっと『リンカーン』を観た。これによって第85回アカデミー賞受賞作をほぼ観終わったので、アメリカ社会を映す鏡として考えると納得できる部分もあるが、?マークがつく作品もあった。その感想を以下に。アルゴアルゴブルーレイ&DVD (2枚組…

猫と漾虚集

漱石の作家デビューは『吾輩は猫である』であり、第一回が「ホトトギス」明治38(1905)年1月に掲載され、その反響の大きさ故、続篇を書き連載ものとなって行ったことは、あまりにも有名で、いまさら敢えて取り上げることでもないだろう。周知のことであるが…

図書大概

とくに、大沼晴暉『図書大概』(汲古書院,2012.11)は、確かに漢籍や和本に関する、書誌学的な解説本だが、武藤氏が記しているように、「図書の調べ方」は必読箇所である。その前に「刊、印、修」の違いは、洋装本でいえば、「刊」は「版次」、「印」は「…

みすず読書アンケート2013

毎年『みすず』の1月・2月合併号は、前年度の「読書アンケート特集」であり、楽しみにしていた。しかしながら、率直に云って、書物の収穫とは、個人的なものであり、多くの専門家が揃って推薦している本の価値とは何か。価値とは、読者が納得できてしかも感…

NACSIS Webcat

NACSIS Webcatは、国立情報学研究所の総合目録であり、書誌と所蔵が確認できる貴重なサービスである。何より体裁がシンプルなところが良い。そのサービスが近々廃止になる。 図書館ネットワーク―書誌ユーティリティの世界 (情報学シリーズ)作者: 宮沢彰,国立…

日本語の深層

熊倉千之著『日本語の深層』(筑摩書房, 2011)は、日本語の特質について「源氏物語」「古今和歌集」に遡り、西欧語の文法で構築された、古文法の過ちを、個別に動詞活用の実態や助動詞の分析などを明快に例示して行く。このあたりの前半について詳細にコメン…

日本の夜と霧

大島渚監督は、『御法度』(1999)を最後に映画を撮れないまま、闘病生活を続けていた。2013年1月15日に他界の訃報がニュースで伝えられた。大島監督といえば、吉田喜重、篠田正浩監督とともに松竹ヌーヴェルヴァーグを牽引した。『日本の夜と霧』(1960)の…

暗殺者たち

『新潮』2013年2月号に、黒川創著「暗殺者たち」が冒頭に収録されていて、漱石の全集未収録作品で、「満州日日新聞」明治42年11月5日、6日にわたり掲載された「韓満所感」が、マイクロフィルム版と、活字に翻刻したものを付録として黒川作品に付されている。…