ブログ休載について

本ブログは2023年11月9日現在、休載中です。 ブログ再開は、2024年を予定しています。

そして漱石はつづく

漱石関連文献 林原耕三『漱石山房の人々』(講談社文芸文庫,2022.02)の復刊 漱石山房の人々 (講談社文芸文庫) 作者:林原 耕三 講談社 Amazon 森まゆみが永井荷風『鴎外先生』(中公文庫,2019)の「解説 鴎外と荷風」のなかで記している。 残念なことだが、…

古井由吉は最後の日本近代作家であり、作品は古典になる

古井由吉の文(アンケート) 『新潮』(2022年3月号)に古井由吉三回忌に寄せてと題して、19名の作家・評論家などから、あなたの一文を寄せる」アンケート回答が掲載されている。 まずは、19名による引用文を列挙してみよう。 石井遊佳撰 汗まみれになった気…

ケリー・ライカートまたはケリー・ライヒャルトはハリウッド映画を解体する女性監督だ

ケリー・ライカートの映画 ケリー・ライカートの映画を、「ケリー・ライカートの映画たち~漂流のアメリカ」特集で4本、配信・DVD等で2本、計6本を見た。 Kelly Reichardt アメリカンインディーズ映画で著名だが、今回初めて彼女の既成ハリウッド映画を否…

『ボストン市庁舎』がフレデリック・ワイズマン監督二度目のベスト1となった

映画ベストテン2021 2021年映画ベストテンを以下に記して置きたい。そろそろ止め時と思いつつ今年も、コロナ禍を回避して49本を映画館で見た。作家別の作品ランキングなど、DVDや配信ビデオで見直すことも増え、よく映画を見た年だった。 映画ベストテン選出…

コメディ映画の偉大な監督ビリー・ワイルダーの基本は脚本にあった

脚本・監督=ビリー・ワイルダー ~「完璧な人間なんて、ひとりもいない」(『お熱いのがお好き』)~ ~「何よりも重要なのはよい脚本です。映画監督は錬金術師ではない。にわとりの糞から金を作り出すことなんて不可能なのだ。」(ビリー・ワイルダー)~ …

森田芳光の・ような映画監督は今後出てこないだろう

森田芳光全映画 宇多丸、三沢和子編『森田芳光全映画』(リトルモア,2021)を読了した。ひとりの映画作家の全作品を解題する書物は、めずらしいことだ。自主映画から始め、どこの映画会社にも所属せず、助監督修行もなく、自ら自分が撮りたい映画で出発する…

映画監督・川島雄三は時間経過によって普遍性を帯びてきた

花に嵐のたとえもあるぞサヨナラだけが人生だ~川島雄三覚書 川島雄三は、日活に入社し、清水宏、小津安二郎、木下恵介などの実力監督のもとに助監督として働き、『還って来た男』(1944)で織田作之助原作を第一作として監督昇格する。松竹最後の作品が『昨…

中平康は高く「評価」されるべき映画監督だ

中平康の映画作品 中平康は、松竹に入社し、大場秀雄、原研吉、渋谷実等の助監督を務める。その後、1954年に日活再開とともに、日活に移籍。山村聰、田坂具隆、新藤兼人の助監督に付き、『狂った果実』で監督として華々しいデビューを飾る。太陽族映画、ある…

「映画女優の自伝」を読む2(キッチリ山の吉五郎)

私の渡世日記 高峰秀子の自伝、『私の渡世日記』(文春文庫,1998)を読む。 わたしの渡世日記 上 (文春文庫) 作者:高峰 秀子 文藝春秋 Amazon わたしの渡世日記 下 (文春文庫) 作者:高峰 秀子 文藝春秋 Amazon 女優の自伝について、小津安二郎メモの関連とし…

「映画女優の自伝」を読む

女優岡田茉莉子 女優 岡田茉莉子 作者:岡田 茉莉子 文藝春秋 Amazon 小津安二郎のDVDを見直していると、小津映画サイレント期の名優岡田時彦の娘、岡田茉莉子の出演作二本、『秋日和』と『秋刀魚の味』にコメディエンス的女優として出演している。岡田茉莉子…

鈴木清順映画はバイアスを排除した評価をすべきときだ

鈴木清順映画 清純神話といういつの間にか神ががりの映画監督と称される鈴木清順について、ベストテンを記録しておきたい。もちろん、目標はあの淀川長治さんの「映画ベスト1000」にほかならない。 鈴木清順に関する言説はいまや至るところに横溢している。…

エルンスト・ルビッチはドアの開閉によって完璧な映画をつくる

エルンスト・ルビッチに関する二・三の事柄 エルンスト・ルビッチは完璧な映画をつくる。 ルビッチ・タッチと呼ばれる独特のショットのリズム、すべてがジャンル映画、すなわち「恋愛コメディ映画」の名手とされる。ヒッチコックが「サスペンス」に終始した…

『情報の歴史21』の25年ぶりの増補改訂版の出版を寿ぎたい

情報の歴史21 松岡正剛監修『情報の歴史21』(編集工学研究所,2021)を入手した。 25年振りの増補改訂版だ。初版からは30年経過している。 この本にこそ松岡正剛の思想が凝縮している。 情報の歴史21: 象形文字から仮想現実まで 作者:編集工学研究所,イシス…

ジャン・ルノワールの映画は美しく官能的だ

ジャン・ルノワールの映画 『淀川長治映画ベスト1000決定版・新装版』(河出書房新社,2021)をみていて、ジャン・ルノワールについては、次の6本しかあげていないことに気づいた。 淀川長治映画ベスト1000〈決定版 新装版〉 作者:淀川長治 発売日: 2021/04/…

『羊の歌』は加藤周一の<優秀な知的観察者>に共感できるかどうかだ

『羊の歌』 かねてから懸案だった加藤周一『羊の歌』正・続編および、『「羊の歌」その後』を読む。かつて所持していた新書二冊は、所在不明のため購入しなおした。2014年に改版され活字が大きくなっていた。 羊の歌―わが回想 (岩波新書 青版 689) 作者:加藤…

トルストイは『セルギー神父』が経験する聖人への段階を示した(宗教批判的に)

セルギー神父 トルストイ原作の映画『セルギー神父』(1978)は、イーゴリ・タランキン監督による作品で、セルゲイ・ボンダルチュクが主演した、実に、19世紀ロシア社会のロシア正教という一種異端のキリスト教世界と現世のかかわりを、淡々と描く傑作であっ…

ジャック・リヴェットは舞台劇を導入し映画を再生させた

映画は20世紀最大の芸術である 新型コロナウィルスの世界的蔓延によって、パンデミックとなり、芸術活動全般が制御されている。アメリカの爆発的感染者の驚くべき増大により、ブロードウェイや、ハリウッド系の映画館が閉鎖されている。従来のように、映画が…

『裁かるるジャンヌ』以前のドライヤーのフィルムは「情熱」の現れだ!

『ミカエル』ほか・カール・Th・ドライヤーのサイレント作品 カール・Th・ドライヤーのサイレント作品6本を観た。DVD再生装置に不具合が起きたためPCにて再生した。結果として、サイレント映画を見るには、PCが好ましかった。観た順とは異なるが、製作順に…

溝口健二『残菊物語』とフリッツ・ラング『スピオーネ』は必見の映画だ

見るレッスン 映画史特別講義 『ゴダール マネ フーコー 増補版』(青土社,2019)の刊行から、2020年に入り、『言葉はどこからやってくるのか』(青土社,2020)や『アメリカから遠く離れて』( 河出書房新社,2020)が矢継ぎ早に刊行され、ついに新書版で『見…

今年は外国及び日本映画とも女性主演映画がベスト1となった

映画ベストテン2020 今年2020年は、コロナ禍のため、3月から5月まで映画館に行けなかった。例年に較べてスクリーンで観た映画は少なく、47本だった。目標が80本なのだが、新型コロナウイルスを回避するため、自宅巣ごもりの一年となった。 映画館で観た映画…

パティニール画集の出版を期待したい

三つの庵 ソロー、パティニール、芭蕉 クリスチャン・ドゥメ著『三つの庵 ソロー、パティニール、芭蕉』(幻戯書房,2020)は、隠遁生活を求めていたものにとって、きわめて刺激が強いタイトルだ。タイトルと出版社をみて購入することはあまりないことだが、…

古井由吉の作品が預言になっていることに驚く

#古井由吉 われもまた天に 古井由吉氏の遺作『われもまた天に』(新潮社,2020)を読む。 われもまた天に 作者:由吉, 古井 発売日: 2020/09/28 メディア: 単行本 「雛の春」「われもまた天に」「雨あがりの出立」「遺稿」の四編から成る。 冒頭の「雛の春」…

坪内祐三は、シブく古くさいエッセイストとして出発し、少年時代に回帰した

#坪内祐三 玉電松原物語 坪内祐三の最後の連載もの「玉電松原物語」が2019年『小説新潮』五月号からであり、2020年1月突然の死によって中断された。今回、遺作として『玉電松原物語』が、新潮社から発売された。現物を入手。 玉電松原物語 作者:坪内祐三 発…

「品川猿」「品川猿の告白」は「ラガー」ではなく「黒ビール」で読み解く

一人称単数 村上春樹の6年ぶりの短編小説集『一人称単数』(文藝春秋,2020)を、遅ればせながら読了した。 一人称単数 (文春e-book) 作者:村上 春樹 発売日: 2020/07/18 メディア: Kindle版 八編の短編が収録されているが、中でも特筆すべきは「品川猿の告…

高山宏の翻訳書は歴史に残る快挙、更に『ガリヴァー旅行記』が一冊加わる。

アリスに驚け 高山宏『アリスに驚け アリス狩りⅥ』(青土社,2020)が、 発売予告から10年以上の時を経て刊行された。 アリスに驚け 作者:宏, 高山 発売日: 2020/09/26 メディア: 単行本 目次の構成は次のとおり。第1部 アリスに驚け第2部 *メルヴィル・…

草森紳一・副島種臣・石川九楊

蒼海 副島種臣―全心の書―展 図録 蒼海副島種臣 全心の書 草森紳一が、李賀(長吉)とほぼ同じ分量の原稿を書き残している副島種臣の「書」に関する図録・佐賀県立美術館編『没後100年記念 蒼海 副島種臣―全心の書―展 図録』(佐賀新聞社,2007二刷)を入手し…

草森紳一の小説を超える雑文集『副島種臣(仮)』の出版を期待する

記憶のちぎれ雲 草森紳一というマエストロに遭遇してしまった。かつて文春新書の『随筆 本が崩れる』に拙ブログで触れたことがある。2005年10月24日に記載しているが、草森紳一氏についてほとんんど知らなかったことを、『随筆 本が崩れる』(中公文庫,2018…

文壇「坪内組」ならこう言うぜ、『坪内祐三文学年表』出版もあるでよ

東京タワーならこう言うぜ 坪内祐三いうところのヴァラエティ・ブック『東京タワーならこう言うぜ』(幻戯書房,2012)を入手した。この種の本は『古くさいぞ私は』(晶文社,2000)以来のことである。この間12年間に、坪内氏の姿勢は文学や書店・古書店など…

坪内祐三にサヨウナラ、はまだ早い

みんなみんな逝ってしまった、けれど文学は死なない。 坪内祐三追悼特集雑誌が二冊刊行された。『本の雑誌2020年4月「さようなら、坪内祐三」』(本の雑誌社,2020)と『ユリイカ総特集坪内祐三』(青土社,2020)だ。 本の雑誌442号2020年4月号 発売日: 202…