2014-01-01から1年間の記事一覧

本の収穫2014

恒例の書物の収穫について、ブログで触れてきた本以外の収穫として、以下に順不同で記載する。 ◎トマ・ピケティ著・山形浩生[ほか]訳『21世紀の資本』みすず書房,201421世紀の資本作者: トマ・ピケティ,山形浩生,守岡桜,森本正史出版社/メーカー: みすず書…

映画ベストテン2014

今年も恒例の映画ベストテン。『キネマ旬報』12月下旬号に掲載されたベストテン候補リストから選出した。2014年に映画館で観た映画は、100本だった。 今年一番の話題映画は、ラース・フォン・トリアー『ニンフォマニアックVOL.1,2』だろう。このフィルムをど…

祖父江慎デザイン「心」

祖父江慎デザインによる、漱石自筆原稿に基づく『こころ』(岩波書店,2014)が刊行された。漱石の『こころ』のテキストは、多数存在するが、岩波全集最新版は、自筆原稿に基づくと謳っているけれど、原稿に完璧に近いテキストが、ここに誕生した。 漱石 心 …

内田樹の大市民講座

内田樹の大市民講座作者: 内田樹出版社/メーカー: 朝日新聞出版発売日: 2014/11/20メディア: 単行本この商品を含むブログ (4件) を見る 内田樹『内田樹の大市民講座』(朝日新聞出版,2014)の「首相の欺瞞的な構文」のなかでも以下のように指摘している。 2…

街場の戦争論

街場の戦争論 (シリーズ 22世紀を生きる)作者: 内田樹出版社/メーカー: ミシマ社発売日: 2014/10/24メディア: 単行本この商品を含むブログ (25件) を見る 内田樹『街場の戦争論』(ミシマ社,2014)が、当該問題についての本質的な見解を示している貴重な内…

丸山眞男話文集続3

みすず書房から『丸山眞男話文集・続3』が、2014年11月21日付けで刊行された。その中に丸山眞男を囲む「楽しき会」の記録が、録音から文章化されている。 丸山眞男話文集 続 3作者: 丸山眞男,丸山眞男手帖の会出版社/メーカー: みすず書房発売日: 2014/11/2…

トリュフォー最後のインタビュー

フランソワ・トリュフォー没後30年記念出版として、山田宏一・蓮實重彦『トリュフォー最後のインタビュー』(平凡社,2014)がこの度刊行された。インタビュー自体は、生前に行われたいたわけだから、30年間も放置されていたことに驚いた。 トリュフォー 最…

坊っちゃん事典

10月には、『坊っちゃん事典』(勉誠出版)が刊行された。三部構成で、「作中用語篇」「関連項目篇」「コラム篇」になっている。国民文学作家の代表作である、『坊っちゃん』単独の事典というものめずらしいし、いかに漱石ファンが多いかの証明でもある。 『…

夏目漱石周辺人物事典

原武哲編著『夏目漱石周辺人物事典』(笠間書院,2014)が7月末に発売された。漱石に関する文献や事典などは、膨大な数にのぼる。しかし、今回発売された本書は、漱石本人ではなく、文豪の周辺人物に関する、いわば読む事典である。ひとりの作家について、そ…

こころ、先生の遺書

夏目漱石が、東京朝日と大阪朝日に100年前、1914年に新聞連載した「こころ、先生の遺書」が、朝日新聞に再掲載され、百十回を迎えた。しかし、この連載内容は、復刻を装っているけれど、本文は現在、岩波文庫で刊行されている本文から、転載している。 ここ…

丸山眞男話文集・続

丸山眞男氏の生誕100年記念として、『丸山眞男集・全16巻別巻1』(岩波書店)が復刊刊行中であり、「岩波書店の新刊」8月号にて、本年末から続編「別集全5巻」刊行と予告されている。 丸山眞男話文集 続 1作者: 丸山眞男,丸山眞男手帖の会出版社/メーカー: …

帝国の構造

柄谷行人『世界共和国へ』(2006)の発売時に、拙ブログで触れたことがある。そこでは、氏の新書本を批判的に見ていた。しかし、著者のその後の出版物を読みながら、最新刊の『帝国の構造: 中心・周辺・亜周辺』(青土社,2014)を読むに至り、四交換様式の…

「ボヴァリー夫人」論

蓮實重彦著『「ボヴァリー夫人」論』(筑摩書房,2014)。蓮實重彦氏は、30年くらい前から『ボヴァリー夫人論』出版の話をしてきたと記憶している。ついに集大成として出版された。 「ボヴァリー夫人」論 (単行本)作者: 蓮實重彦出版社/メーカー: 筑摩書房発…

憲法の「空語」を充たすために

内田樹氏による、講演記録『憲法の「空語」を充たすために』(かもがわ出版,2014.08)を読了した。 憲法の「空語」を充たすために作者: 内田樹出版社/メーカー: かもがわ出版発売日: 2014/08/09メディア: 単行本この商品を含むブログ (5件) を見る 場所は神…

戦争が露出してきた

21世紀には世界平和が実現し、冷戦構造の終焉を経て、地域的な紛争は存続するものの、世界大戦はまず起こり得ないはずだった。21世紀初頭の9.11が、この世紀の不安定さを露出させたのは、周知のとおりだ。 国家が存在感を増幅するのは、戦争によってである。…

『WOOD JOB !神去なあなあ日常』

神去なあなあ日常作者: 三浦しをん出版社/メーカー: 徳間書店発売日: 2014/01/24メディア: Kindle版この商品を含むブログ (10件) を見る 日本映画の上半期収穫のもう一本は、矢口史靖監督の『WOOD JOB !神去なあなあ日常』(2014)であった。これも原作は三…

ぼくたちの家族

石井裕也脚本・監督『ぼくたちの家族』は、母・原田美枝子の深刻な病気を発端に、夫・長塚京三、長男・妻夫木聡、二男・池松壮亮の家族が、それぞれ問題を抱えながらも、母の病の原因究明と治療に、各々の位置で、母を心から大切に思える家族となる物語であ…

思い出す事など

朝日新聞は、漱石『こころ』掲載100年百年目に、再掲載すると発表した。2014年4月20日、100年目にあわせて当時と同じ「心(こころ) 先生の遺書」のタイトルカットで、掲載が始まった。 こころ (岩波文庫)作者: 夏目漱石出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 19…

柄谷行人インタヴューズ

柄谷行人『柄谷行人インタヴューズ』が、2冊本で刊行されている。『1997-2001』と『2002−2013』(講談社文芸文庫,2014)を通読する。 柄谷行人インタヴューズ1977―2001 (講談社文芸文庫)作者: 柄谷行人出版社/メーカー: 講談社発売日: 2014/02/11メディア: …

映画術

「映画術」は、ヒッチコックにトリュフォーがインタビューした『映画術』(晶文社,1981)が著名だが、映画監督の塩田明彦が、映画美学校で7回にわたり講義した内容を採録した『映画術』(イースト・プレス,2014)が実に面白い。映画を撮る側から、映画を…

私たちはどこから来て、どこへ行くのか

宮台真司『私たちはどこから来て、どこへ行くのか』(幻冬舎,2014)読了。と言っても、かなり読みにくい本だった。敢えて、文章に学術用語を多用しているのは、詳細な「注釈」を付すためなのか。一種の衒学的趣味が漂う。 私たちはどこから来て、どこへ行く…

みすず読書アンケート2014

みすず書房『みすず』、2014年1月・2月号「読書アンケート特集」を入手した。早速、通読してみる。金森修氏の文章にまず眼を惹かれた。 この場所で、昨年の私は、この国の行く末を私なりに憂慮していた。ただその際、主に念頭にあったのは放射線障害に関する…

遊動論‐柳田國男と山人

遊動論 柳田国男と山人 (文春新書)作者: 柄谷行人出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2014/01/20メディア: 新書この商品を含むブログ (16件) を見る 柄谷行人が、『文学界』掲載の「柳田國男論」をまとめたものを、『遊動論‐柳田國男と山人』(文春新書,2014…

つながる図書館

猪谷千香『つながる図書館―コミュニティの核をめざす試み』(ちくま新書,2014)は、この10年間で、公共図書館が地域を拠点に如何に変貌したか、千代田図書館から、最近話題の武雄市図書館まで紹介しながら、わたしたち利用者にとって図書館はどうあるべきか…