私の頭の中の消しゴム


コンビニで出会うソン・イェジンチョン・ウソンは、相手が飲もうとしているコーラの缶をソン・イェジンがいきなり、奪って飲み、缶を相手に返す。同じことが、逆パターンで繰り返される。不倫相手に捨てられた傷心のソン・イェジン、家庭の崩壊と母との葛藤で疲れ果て、仕事に意義を見出している建設現場監督のチョン・ウソン。出会うはずのない、二人が宿命的に出会うのが、コンビニの出口だった。


出会いから結婚へのスピード感。ときどき物忘れ・健忘症の兆候を見せるソン・イェジンの愛嬌ある表情がいい。アルツハイマー病の専門医の質問や、医者とソン・イェジンが交わす会話が面白い。医者のキャラクターが、この悲劇にふさわしい優しさと厳しさを備えている。


映画の前半は、お嬢さまソン・イェジンのペースで進むが、アルツハイマー病と診断された後は、夫のチョン・ウソン側の視点で物語がすすむ。TVドラマにはほとんど出演していない俳優チョン・ウソンは、まさしく映画俳優であることを証明するシークエンスである。


記憶がなくなることの科学的な意味について考えてしまう。脳の記憶については測定可能としたのはベルグソンだが、果たして人間の「心」は、記憶の喪失とともになくなるのか。大きな疑問だ。韓国ドラマには記憶喪失が数多く描かれるが、記憶喪失は回復の可能性があるけれど、アルツハイマー病は、病の進行を止めることができない。「心脳問題」からどうみるか。


ラストシーンは、物語の発端になっているコンビニ。悲劇を爽やかに見せるこのエンディングが映画自体の印象を良くしていることは確かだ。


私の頭の中の消しゴム ナビゲートDVD ~君が僕を忘れても~

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