映画作家　森田芳光の世界

出版社/メーカー: キネマ旬報社
発売日: 2012/04/26
メディア: 大型本
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キネマ旬報社から、『キネマ旬報臨時増刊　映画作家　森田芳光の世界』（2012）が発売され、入手した。森田氏の作品は、27本。黒澤明は日本映画監督として、製作本数が少ないが、それでも30本は撮っている。

享年61歳はあまりに若い。＜『僕達急行 A列車で行こう』が遺作とはチト、サビシイ＞。『人情紙風船』の山中貞雄が召集令状のもと戦地に赴く前に語った有名な言葉が「紙風船が遺作とはチト、サビシイ」で、森田氏の場合、山中貞雄の28歳とは較べられないけれど、やはり淋しい。それは、以下に示すフィルモグラフィで明らかだろう。様々なジャンル、例えばコメディ・喜劇・悲劇・風俗劇・時代劇・アイドル映画・日活ロマンポルノ・ミステリー・サコスリラー・文芸作品・趣味映画等々を撮っているが、普通に成熟したとは言い難いし、巨匠でもない。斬新な、あるいは先端的映画作家という表現が相応しいだろう。

＜フィルモグラフィ>

の・ようなもの（1981）―落語・趣味映画
シブがき隊ボーイズ&ガールズ（1982）―アイドルもの
本（マルホン）噂のストリッパー（1982）―ロマンポルノ
ピンクカット太く愛して長く愛して（1983）―ロマンポルノ
家族ゲーム（1983）―新しいホームドラマ
メイン・テーマ（1984）―薬師丸ひろ子・アイドル
ときめきに死す（1984）―前衛的カルト作品
それから（1985）―漱石作品
そろばんずく（1986）―東宝コメディ映画の森田版
悲しい色やねん（1988）ー東映ヤクザ映画の森田版
キッチン（1989）―吉本ばななの文芸作品
愛と平成の色男（1989）―ジャン分け不可能（？）
おいしい結婚（1991）―小津作品へのオマージュ
未来の想い出 Last Christmas（1992）―ＳＦ
(ハル)（1996）―パソコン通信
失楽園（1997）―ベスセラー小説
39 刑法第三十九条（1999）―裁判映画
黒い家（1999）―サイコスリラー
模倣犯（2002）―推理小説
阿修羅のごとく（2003）―向田ドラマ
海猫（2004）―メロドラマ
間宮兄弟（2006）―原点回帰・趣味映画
サウスバウンド（2007）―過激派のその後
椿三十郎（2007年）―黒澤明のリメイク時代劇
わたし出すわ（2009）―コメディなのか（？）
武士の家計簿（2010）―殺陣のない時代劇
僕達急行 A列車で行こう（2012）―鉄道オタク・趣味映画

『森田芳光の世界』では、多くの出演俳優やスタッフが、森田組について熱く語っている。個人的には、『の・ようなもの』で落語家・しん魚を演じた伊藤克信が、その後、主演はないものの、常連としてちょい役で出演しているシーンを見ると嬉しかった。しかしながら、処女作『の・ようなもの』には、秋吉久美子は別格として、その後多くの映画で活躍することになる室井滋、でんでん、鷲尾真知子、エドはるみまで出演していたことに今更ながら驚いてしまう。