文学鶴亀
武藤康史『文学鶴亀』(国書刊行会、2008.2)を少しづつ読み、年譜・書誌・辞書史等の地味な仕事をこなしてきた武藤氏ならではの、硬質な文体と内容に驚嘆しつつ読み続けている。
- 作者: 武藤康史
- 出版社/メーカー: 国書刊行会
- 発売日: 2008/02/01
- メディア: 単行本
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吉田健一への開眼、里見トンへの傾斜、小津安二郎の「ことば」へのこだわり。野口富士男作品の紹介と引用、また夭折した若き女流歌人・安藤美保への思慕など、著者がこだわりをもつ作家・詩人などに言及する文体は、一種古風であり、高校生時代から「旧かなづかい」で書くことを貫いてきた頑固一徹な文人とみた。
- 作者: 吉田健一,清水徹
- 出版社/メーカー: みすず書房
- 発売日: 2002/06
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いまどき、めずらしい文体の持ち主であり、地味な自分が好む仕事に徹していて、本書は著者の批評文が一冊にまとめたられた本で、20年分の短文が収録されている。書誌関係では、紅野敏郎、谷沢永一の流れを引き継いでいるようだ。
- 作者: 紅野敏郎
- 出版社/メーカー: 雄松堂出版
- 発売日: 1999/03/01
- メディア: 単行本
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- 作者: 谷沢永一
- 出版社/メーカー: 東洋経済新報社
- 発売日: 2004/01/17
- メディア: 単行本
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「旧刊十二番勝負」は、里見トン、邦枝完二、舟橋聖一、矢田津世子、新田潤、野口富士男、井上立士、岡田三郎などを取り上げ、文章表現上の細部への関心のありように、著者の姿勢が伺える。
- 作者: 矢田津世子,川村湊
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2002/04/10
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巻末に収録された「国語辞典で小津安二郎を読む」と「里見トンと小津安二郎」は、実に楽しい読み物になっている。「ことば」へのこだわり振りに、武藤康史の本領発揮というところか。
「日本語探偵帖」には、「チェッ」「算える」「団菊じじい」「留別会」「御愉快筋」「おたおた」「鉄管ビール」「内ごしらえ」「世間気」「しめこのうさぎ」「から」などを原典を引用しながら解説していて、愉快至極。
たしかに、古い言葉というより「粋なことば」を使うと、文章が引き締まる。『文学鶴亀』は発見の多い書物であり、作文に実用として応用することができる。
- 作者: 里見トン,武藤康史
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2003/05/10
- メディア: 文庫
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ちなみに「文学」も「鶴亀」も里見トンの作品のタイトルから取られている。早速、里見トン『初舞台・彼岸花』(講談社文芸文庫,2003.10)の「椿」と「鶴亀」を読む。小説のなかの会話のニュアンスは、小津作品の台詞に似ているではないか。とりわけ「鶴亀」の鶴おばあさんが怪我から病気になったとき、孫娘たちが喪服を買った話をする、これは小津が『東京物語』で杉村春子に喪服の準備をさせるシーンに引用していたことを想起させる。小津が里見トンの愛読者であり、セリフのリズムを模倣していたことが、武藤康史『文学鶴亀』を通じて分かったことだけでも大きな収穫であった。
- 出版社/メーカー: Cosmo Contents
- 発売日: 2007/08/20
- メディア: DVD
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小津のみならず、武藤康史『文学鶴亀』から多くのことを学ばせていただいた。とくに「ことば」の歴史的重みを。20年間蓄積された本書には、濃密な内容が含まれている。久々に一冊で数冊分の書物に出会えた幸福を味わうことができた。
- 作者: 武藤康史
- 出版社/メーカー: 三省堂
- 発売日: 2002/12
- メディア: 単行本
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- 作者: 武藤康史
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2007/05
- メディア: 文庫
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- 作者: 武藤康史
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2002/03
- メディア: 文庫
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■補記