2006-01-01から1年間の記事一覧

うつせみ

マンションや住宅街で玄関に飲食店の広告を貼りつけて行く青年。バイクで走り去る。その後、青年は同じ場所に戻ってきて、広告を貼り付けた家の玄関を確認して行く。広告が貼られたまま残されている家屋の鍵を持参した道具で開け、部屋の内部へ進入する。「…

アマデウス ディレクターズカット版

ミロス・フォアマン『アマデウス』(1984, 160分)を公開時にスクリーンで観て以来、今回、「ディレクターズカット版」(2001,180分)をスクリーンで観る。この20年間に本作を観る上での、決定的な違いは、ロケ地であるプラハを訪れたことと、モーツァルトの…

老後がこわい

香山リカ『老後がこわい』は、シングル女性の老後問題を自らの体験として述べており、かなり説得的に問題の所在を指摘している。 老後がこわい (講談社現代新書)作者: 香山リカ出版社/メーカー: 講談社発売日: 2006/07/19メディア: 新書購入: 6人 クリック: …

マイアミ・バイス

口直しにマイケル・マン『マイアミ・バイス』を観る。久々に、面白い!と感じさせる。警察官のマフィア潜入ものだが、コリン・ファレルとジェイミー・フォックスのコンビが絶妙。チャン・イーモウの主演女優だったコン・リーが加わる。スタイリッシュでパン…

シュガー&スパイス

山田詠美『風味絶佳』(文藝春秋,2005)の中の一編、表題作の「風味絶佳」を映画化した『シュガー&スパイス』を観た。『誰も知らない』でいきなりカンヌ映画祭主演男優賞を受賞した柳楽優弥くんの主演作。また、相手役に『パッチギ』で注目を浴びた沢尻エ…

「著作権保護延長」に反対する

著作権の保護期間は、現在の日本では著者の死後50年だが、それが70年に延長されようとしている。「朝日新聞」に2006年9月12日から3回連続で連載された「著作権のふしぎ」や、福井健策が『中央公論』10月号に寄稿した「「著作権保護延長」は文化を殺すのか」…

私の幸福論

福田恆存『私の幸福論』の初版が刊行されたのは1956年であり、『幸福への手帖』と題して新潮社からであった。高木書房版で『私の幸福論』と改題され、若干の加筆訂正されたのが筑摩文庫版で、福田恆存の本としては、『私の國語教室』(文春文庫,2002)とと…

おんなの浮気

堀江珠喜『おんなの浮気』(ちくま新書,2006.8)を、タイトルに惹かれ購読したが、トンデモ本であった。某大学教授という肩書きから、学問的に考察しているものだと思った。 おんなの浮気 (ちくま新書)作者: 堀江珠喜出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 2006/…

資本主義から市民主義へ

資本主義から市民主義へ作者: 岩井克人,三浦雅士出版社/メーカー: 新書館発売日: 2006/07/01メディア: 単行本購入: 2人 クリック: 23回この商品を含むブログ (30件) を見る 岩井克人に三浦雅士が聞き手となった対談集『資本主義から市民主義へ』(新書館)は…

第5回小林秀雄賞

荒川洋治『文芸時評という感想』(四月社、2005)が、「第5回小林秀雄賞」を受賞した。12年間の「産経新聞」掲載の「文芸時評」を収録した本が小林秀雄賞というのは、初期の小林氏のスタイルを考えれば、じつに妥当な選出だろう。拙ブログでは昨年末の12月2…

考える人

新潮社の季刊誌『考える人』の創刊号からの連載をまとめた坪内祐三『考える人』を読了。小林秀雄で始め、福田恆存で終えている。田中小実昌、中野重治、武田百合子、唐木順三、神谷美恵子、長谷川四郎、森有正、深代惇郎、幸田文、植草甚一、吉田健一、色川…

UDON

TVディレクターであった本広克行が監督した『踊る大捜査線 THE MOVIE』(1998)以降、エンターテインメントとして撮る映画に注目してきた。前作『サマータイムマシンブルース』は拙ブログでも「傑作」として取り上げたが、映画づくりの骨法を押さえた彼の才能…

坂口安吾 百歳の異端児

今年2006年が、安吾生誕100年になる。出口裕弘『坂口安吾 百歳の異端児』読了。安吾といえば、通常、『堕落論』『白痴』『桜の森の満開の下』『安吾巷談』など戦後の作品を中心にいわゆる無頼派として評価されてきた。 坂口安吾 百歳の異端児作者: 出口裕弘…

ゲド戦記

あらかじお断りしておきたい。この覚書は、今ネットで宮崎吾朗バッシング現象があるらしいが、それとは全く無関係である。以下は、あくまで個人的な感想にすぎない。 宮崎吾朗の第一回監督作品『ゲド戦記』は、父駿のジブリ後継者としての可能性が判断される…

憲法九条を世界遺産に

日本国憲法の改正論議が活発ななかで、どちかといえば改正派が強くなりつつある状況で、九条問題に絞りしかもそれを「世界遺産」として評価するという提案のもと、爆笑問題の太田光が、宗教人類学者で思想家の中沢新一と対談した新書『憲法九条を世界遺産に…

サルトル『むかつき』ニートという冒険

みすず書房「理想の教室」シリーズの8月刊行、「実存主義」再評価の二冊目。合田正人『サルトル『むかつき』ニートという冒険』は、いささかてごわい。というより、本書は、「理想の教室」からズレてしまっている。つまり、テクストの解読というこのシリ−ズ…

カミュ『よそもの』きみの友だち

野崎歓『カミュ『よそもの』きみの友だち』を読む。みすず書房「理想の教室」シリーズで、今月は、実存主義のサルトルとカミュの新たな、「読み」に挑戦している二冊が刊行された。『異邦人』として読んできたカミュの代表作を、野崎歓が『よそもの』として…

立喰師列伝(原作)

映画版を観るとき、未読であった小説版『立喰師列伝』は、押井守の思惟方法が解かる内容になっている。映画『立喰師列伝』の原作にして、いわば押井守の原点であり、思想的集大成ともいえる傑作だ。 立喰師列伝作者: 押井守,落合淳一出版社/メーカー: 角川書…

これからホームページをつくる研究者のために

メールマガジン「Academic Resource Guide」の編集者・岡本真の初めての著作。副題が「ウェブから学術情報を発信する実践ガイド」として、研究者に論文や学会報告などの学術論文をウェブ上で公開することを奨励するガイドブックになっており、単なる「HPの…

世界一周恐怖航海記

車谷長吉が、嫁はんの高橋順子に誘われて、三ヶ月間の世界周遊の航海に出る。その記録が本書。車谷長吉初めての海外旅行が船旅だった。1000人近い乗客を乗せた豪華客船は、日本社会の縮図であると著者は言う。車谷氏は、高橋順子と友人の詩人・新藤凉子さん…

好きだ、

17歳のユウ(宮崎あおい)は、同級生ヨースケ(瑛太)に心がひかれている。学校からの帰途、川辺で二人は会うのだが、ほとんど会話がない。二人を捉えたキャメラは、青空の空ショットと交互にカットバックされる。ユウには姉(小山田サユリ)がいるが、姉は…

立喰師列伝

押井守『立喰師列伝』は、戦後史を民俗学から借用した架空の「立喰い師」の視点から捉えた大傑作になっている。 立喰師列伝 通常版 [DVD]出版社/メーカー: バンダイビジュアル発売日: 2006/09/22メディア: DVD購入: 1人 クリック: 17回この商品を含むブログ …

私家版・ユダヤ文化論

「ユダヤ人問題」とは永遠の謎だ。内田樹『私家版・ユダヤ文化論』を読むとますます「ユダヤ人問題」が、解らなくなる。ともあれ、内田氏の言説に従ってみよう。 私家版・ユダヤ文化論 (文春新書)作者: 内田樹出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2006/07/01メ…

ハチミツとクローバー

人気コミックの映画化で話題を呼んでいる『ハチミツとクローバー』を観る。監督はCMディレクターの高田雅博。原作(羽海野チカ)は読んでいないので、映画のみから判断する。 ハチミツとクローバー ―PHOTO MAKING BOOK出版社/メーカー: 集英社発売日: 2006…

うつうつひでお日記

吾妻ひでお『うつうつひでお日記』(角川書店)を読む。「事件なし、波乱なし、貧乏、神経症、冷やしラーメン、そば、本屋、図書館」しかでてこない著者の、2004年7月7日から2005年2月16日までの日記、つまりあの大ヒットとなった『失踪日記』発売前の、8ヶ…

小沢昭一的新宿末広亭十夜

小沢昭一が、新宿の末広亭で10日連続高座に出た。そのときの記録が『小沢昭一的新宿末広亭十夜』として発売された。積読から、本日読了した。 小沢昭一的新宿末廣亭十夜作者: 小沢昭一出版社/メーカー: 講談社発売日: 2006/06/27メディア: 単行本 クリック: …

インターネットの法と習慣

インターネットの法と慣習 かなり奇妙な法学入門 [ソフトバンク新書]作者: 白田秀彰出版社/メーカー: ソフトバンククリエイティブ発売日: 2006/07/15メディア: 新書購入: 9人 クリック: 223回この商品を含むブログ (151件) を見る 『Hotwired Japan』の連載…

大学生の論文執筆法

石原千秋による『教養としての大学受験国語』、『大学受験のための小説講義』に続く、大学生関連「ちくま新書」三部作のとりは、『大学生の論文執筆法』。これが、一般人にとっても、滅法面白い。 大学生の論文執筆法 (ちくま新書)作者: 石原千秋出版社/メー…

品川猿

共同通信系ブロック紙に、2006年7月13日付けで掲載された加藤典洋「カウンセリングの本質」は、実に刺激的な内容であった。本人が自覚していない心の傷(真実)をいかにつたえるかというカウンセリングの本質的問題について、村上春樹「品川猿」(『東京奇譚…

クラッシュ

クラッシュ [DVD]出版社/メーカー: 東宝発売日: 2006/07/28メディア: DVD購入: 3人 クリック: 96回この商品を含むブログ (314件) を見る ポール・ハギス監督。第一作でアカデミー賞・作品賞受賞という快挙をなしとげた。『クラッシュ』(Crash, 2005)は、アメ…