2009-01-01から1年間の記事一覧

あなたの頬笑みはどこへ隠れたの?

ペドロ・コスタが、『シチリア!』の編集過程を撮影した『あなたの頬笑みはどこへ隠れたの?』も、同時に発売されている。フィルムを再編集するダニエル・ユイレにジャン=マリー・ストローブが、細かく注文をつけるため、1日に数カットしか編集が進まない。…

シチリア!

ストローブ=ユイレ『シチリア!』(1999)がDVDでこの1月に発売された。このDVDには、本篇以外に舞台版や短編二本と、撮影風景などが収録されている。まず、本篇63分と、舞台上演版70分を観るが、率直に言って理解しがたい。理解を超える作品といえる。スト…

阿呆者

高橋源一郎からいえば、旧共同体に属するであろう車谷長吉『阿呆者』(新書館、2009)を入手。車谷氏は、自己の経験を繰り返し、反復している。本書の中では、「文学の基本」が断然面白かった。 阿呆者作者: 車谷長吉出版社/メーカー: 新書館発売日: 2009/02…

大人にはわからない日本文学史

岩波書店刊行の「ことばのために」シリーズで、唯一残っていた一冊。高橋源一郎『大人にはわからない日本文学史』(2009)を読む。 大人にはわからない日本文学史 (ことばのために)作者: 高橋源一郎出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 2009/02/20メディア: 単…

司書省令科目改正(再び)

司書とは、「図書館法」に定める図書館員であり、学校に付属する図書館や図書室は該当しないと規定されている。大学図書館や学校図書館に勤める館員は、図書館法上の「司書」ではない。まず、この法的根拠を最初に示して置きたい。「図書館法」から 第2条 …

村上春樹氏の「エルサレム賞」受賞講演

まず、イスラエルに赴いたことがいかにも村上氏らしい。某市民団体などが受賞を拒否すべきだというのは、筋違いというもの。それより講演の中で、エルサレムの状況を「壁と卵」の比喩として批判したことこそ、村上春樹の小説家の立場からの発言として評価さ…

文学地図

加藤典洋「関係の原的な負荷―二〇〇八、「親殺し」の文学」(『文学地図』朝日新聞社、2008)は、近代文学における単一の主人公が不在である現代文学について、「関係の原的な負荷」をキイワードに、現代社会の病理に迫る鋭い分析をしている。 文学地図 大江…

みずず2008年読書アンケート

恒例の『みすず』2009年1・2月号「2008年読書アンケート」を通読。例年であれば、獲得票で確認しているが、2009年の場合、突出して選出されているのが少なく、水村美苗さんと内村剛介氏を4人が取り上げていることに言及しておく。 日本語が亡びるとき―英語…

イエス・キリストの生涯を読む

小川国夫『イエス・キリストの生涯を読む』(河出書房新社、2009.01)読了。昨年4月他界された作家・小川国夫は、オートバイで地中海沿岸を旅した経験をもとに綴られた『アポロンの島』が、島尾敏雄に認められ作家活動に専念した。故郷の藤枝市に住み、中央の…

チェ 39歳別れの手紙

1月31日公開の続編『チェ 39歳別れの手紙』(Che part2;Guerrilla, 2008)を観る。第一部が「明」とすれば、第二部は「暗」に相当する。画面は終始暗い。ボリビアに偽名で侵入し、ゲリラ闘争を指導するゲバラは、ボリビア共産党からの支援を得られず、ゲリラ…

チェ 28歳の革命

スティーブン・ソダーバーグ『チェ 28歳の革命』(Che part1;The Argentin 、2008) を観る。アルゼンチン生まれのゲバラが、カストロと出会いキューバ革命の成功までを描いた二部作の前半、いわば栄光のチェ・ゲバラを描く。 オリジナル・サウンドトラック …

司書資格省令科目の改正

2008年6月に「図書館法」が改正され、司書及び司書補にかかわる資格要件の見直しを行うこととなった。現在、図書館司書の資格取得は、「司書講習科目」を前提に省令科目(20単位)を履修・取得することで、認定されている。 図書館法の改正により、同法第5条…

芥川賞・直木賞

いささか旧聞に属するのかも知れないが、第140回芥川賞は、津村記久子『ポトスライムの舟』(『群像』2008年11月号)に決定した。津村さんは既に、太宰賞、野間文芸新人賞の受賞歴を持っている。今回の候補者には、三島賞、川端賞・受賞の田中慎也氏、三島賞…

最後の人

F.W.ムルナウ『最後の人』(Der Letzte Mann, 1924)の復元修復版をDVDにて観る。字幕は冒頭と、途中、超一流ホテルの老ポ−ター、エミール・ヤニングスが解雇されるシーンで通知が文字で出るのみで、ラストのエピローグまで、一切字幕がでない。映像ですべてを…

パンドラの箱

G.W.パプスト『パンドラの箱』(Die buechse der Pandora, 1929)をDVDにて観る。ファム・ファタールとして著名な「ルル」こと、ルイーズ・ブルックスの代表作である。 パンドラの箱 クリティカル・エディション [DVD]出版社/メーカー: 紀伊國屋書店発売日: …

サンライズ

F.W.ムルナウ『サンライズ』(Sunrise, 1927)をDVDにて観る。トリュフォーが「世界一美しい映画」と絶賛したサイレントフィルム。確かに、その映像は輝くばかりに美しく、モノクロ画面に光と影のコントラストが絶妙に造形され、シンプルなストーリーと相…

新刊書への期待

『出版ニュース』2009年1月上・中旬号から「今年の執筆予定」で、気になったものをピックアップしてみた。◎石原千秋『漱石はどう読まれてきたか』・・・同時代評から現在の研究史までを一望する。『こころ』大人になれなかった先生 (理想の教室)作者: 石原千…

挑戦

『ビクトル・エリセDVD−BOX』(紀伊国屋書店、2008.12)が、2008年末に発売された。予約していたものが、年末に届き、本日、未見で日本初DVD化となる『挑戦』(Los Desafios,1969)を観た。 ビクトル・エリセ DVD-BOX - 挑戦/ミツバチのささやき/…

アダム・スミス

堂目卓生『アダム・スミス―『道徳感情論』と『国富論』の世界』(中公新書、2008.03)を新年の読書第一号として、読み終えた。 経済に詳しくないので、あくまで「思想書」として読んだことを前提としておきたい。結論を先に申せば、アダム・スミスは、市場礼…