シチリア!


ストローブ=ユイレシチリア!』(1999)がDVDでこの1月に発売された。このDVDには、本篇以外に舞台版や短編二本と、撮影風景などが収録されている。まず、本篇63分と、舞台上演版70分を観るが、率直に言って理解しがたい。理解を超える作品といえる。ストローブ=ユイレすべてのフィルムは理解しがたいという一点において共通している。ただし、キャメラワークやフレームなどはどの作品も同じスタイルである。


シチリア コレクターズ エディション [DVD]

シチリア コレクターズ エディション [DVD]


きわめて禁欲的なスタイルで撮られるフィルムは、あえて孤立化を招いていて、いわゆる商業映画とは一線を画している。


理解しがたい、にもかかわらず、一旦その画面に魅せられるとその制御された完璧ともいえる映像に捕らわれてしまうからだ。


シチリア!』は、十数年ぶりに故郷に帰り母親と対面することになる男。冒頭は港の埠頭、シルヴェストロ(ジャンニ・ブスカリ−ノ)に、若い妻をつれたオレンジ売りの男が話かけてくる。


続いて列車の中、窓のそばに二人の私服憲兵が会話している。次のシーンは、客室内の座席に座るシルヴェストロと、彼の前の座席には三人。中央の男(大ロンバルディア人)は、声高に自説を滔々と述べる。


これらのシーンは、母親との再会への序曲であり、無人の駅や、窓からの風景をキャメラが捉えながら、シルヴェストロは目的地に着く。母親との会話は、父親との離婚や母の浮気などに言及され、親子の一種論争的様相を呈する。語られる言葉の迫力とでもいおうか。一転、祖父の話に及び最後に二人は和解する。