2005-08-01から1ヶ月間の記事一覧

宇宙戦争

スピルバーグ『宇宙戦争』について、何かを積極的に語ることは避けたい。スピルバーグであれば、どんなテーマの映画も撮ることができるはずだ。『宇宙戦争』の宇宙人とは、『激突』のトラツク、『JAWS』の巨大なサメなどと同様、正体不明な異物であり、『宇…

愛についてのキンゼイ・レポート

伝記映画流行りのハリウッドだが、ビル・コンドン監督、リーアム・ニーソン*1主演『愛についてのキンゼイ・レポート』(Kinsey, 2004)は、発売当時大ベストセラーとなりながらも、キリスト教右派から厳しい批判にさらされた「キンゼイ・レポート」の背景と…

姑獲鳥の夏

京極夏彦の『姑獲鳥の夏』を、実相寺昭雄が映画化した。この種の映画としては、市川崑の『金田一耕助』シリーズを想起させるが、探偵もの映画としては、戦後の時代を示す建物のセットや風景の美術はよくできているし、論理的な語りを朗々とみせる堤真一の京…

愛の神、エロス

ウォン・カーウァイ、スティーブン・ソダーバーグ、ミケランジェロ・アントニオーニ。 この三人が「エロス」をテーマにオムニバス映画を撮るということ自体が話題であるとともに、では、どのような作品になっているのかは、きわめて興味深い。 いってみれば…

帰郷

きわめて平凡きわまりないタイトルの萩生田宏治監督『帰郷』は、小品ながら実に良い味わいあるフィルムになっている。東京で独身のサラリーマン生活を送る西島秀俊のもとに、母・吉行和子から再婚披露案内の葉書が届くシーンから始まる。電車の中の不安な様…

若い読者のための短編小説案内

若い読者のための短編小説案内作者: 村上春樹出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 1997/10メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 12回この商品を含むブログ (15件) を見る若い読者のための短編小説案内 (文春文庫)作者: 村上春樹出版社/メーカー: 文藝春秋発売…

樹影譚

三浦雅士著『出生の秘密』は、丸谷才一『樹影譚』*1の解読から始まっていた。その『樹影譚』については、村上春樹の唯一の日本文学についての作家論・小説論である『若い読者のための短編小説案内』(文藝春秋、1997)で、吉行淳之介「水の畔り」、小島信夫…

出生の秘密

出生の秘密作者: 三浦雅士出版社/メーカー: 講談社発売日: 2005/08/11メディア: 単行本 クリック: 4回この商品を含むブログ (25件) を見る 三浦雅士『出生の秘密』(講談社、2005)は、『青春の終焉』(講談社、2001)に続く、表面上は日本近代文学の新たな…

対幻想の危機=私の困惑

オヤジ憲法の第四条である「真理ヤ理想ハ幻想ナリ」にかかわる問題が私自身に迫ってきました。<「いいかげん」な態度でそれらに付き合っていくこと>が困難になりつつあり、一度、私的な事情を記した文章は削除しました。ここが、「ブログ」のいい(あるい…

オヤジ国憲法でいこう!

オヤジ国憲法でいこう! (よりみちパン!セ)作者: しりあがり寿,祖父江慎出版社/メーカー: 理論社発売日: 2005/08メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 33回この商品を含むブログ (37件) を見る しりあがり寿・祖父江慎著『オヤジ国憲法でいこう!』(よりみち…

ウィスキー

日本初公開のウルグアイ映画『ウィスキー』(2004)は、寡黙さと無表情と暗い不思議なユーモアをかもし出す雰囲気を持つミニマム・フィルムである。こう書けば、ただちにフィンランドの映画監督、アキ・カウリスマキを想起するだろう。実際、映画のスタイル…

魅せられて

魅せられて──作家論集作者: 蓮實重彦出版社/メーカー: 河出書房新社発売日: 2005/07/21メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 19回この商品を含むブログ (19件) を見る 蓮實重彦『魅せられて』(河出書房新社)には、作家論集という副題が示すとおり、蓮實好…

男はつらいよ

全48作という映画史上異例のシリーズ、偉大なるマンネリと称されながらも、第47・48作には、主演の渥美清の体調がすぐれず、観るのも痛々しい思いを伴ったけれど、今回、NHKBSでシリーズ全作の放映が始まった。未見の作品があるので、まず第一作から観…

脇役本

脇役本―ふるほんに読むバイプレーヤーたち作者: 浜田研吾出版社/メーカー: 右文書院発売日: 2005/07メディア: 単行本 クリック: 12回この商品を含むブログ (22件) を見る 濱田研吾著『脇役本 ふるほんに読むバイプレイヤーたち』(右文書院)は、古書からみ…

エレニの旅

冒頭、湖畔に現れた黒づくめの一群が固定した画面の手前に向かって、黙々と歩んでくる。手には大きなトランクを持っている。アンゲロプロスの名作『旅芸人の記録』を想起させるシーンだ。群集は旅芸人ではなく、成立したばかりソ連邦のオデツサから帰還した…

ヴェラ・ドレイク

マイク・リー監督作品『ヴェラ・ドレイク』(2004)が、実に味わい深い人間=家族ドラマになっている。『秘密と嘘』(1996)以来の快挙だ。マイク・リーはいつも、普通の労働者の日常を描き、そこに波紋を投げかける。 1950年のロンドンが舞台。…

国立国会図書館関西館

2002年10月にオープンした「国立国会図書館関西館」を見学してきた。*1 関西文化学術学術研究都市圏内の広大な敷地に建つ地上4階、地下4階の、全面ガラス張りの窓によって覆われたモダンな建物であった。1階はエントランス・ルームになっていて、地…