国立国会図書館関西館


2002年10月にオープンした「国立国会図書館関西館」を見学してきた。*1
関西文化学術学術研究都市圏内の広大な敷地に建つ地上4階、地下4階の、全面ガラス張りの窓によって覆われたモダンな建物であった。1階はエントランス・ルームになっていて、地下が閲覧室と書庫、地上は全て業務用の部屋である。東西に横長の建物の見学は、地下1階の閲覧室、地下2・3・4階の書庫を回るコースであった。*2


国会図書館の蔵書が収蔵できなくなっていること、また、電子図書館の構築を目指すべく、関西館が構想された。国会図書館の蔵書のうち、刊行年の古い図書約300万冊(その後、増加し現在は約400万冊)、アジア関係図書、国内博士論文、文科省科研費報告書、科学技術資料が移転され、それに参考図書類や雑誌が配架されている。


まず、利用者は利用カード(当日のみ利用)を作成し、入館、地下1階の閲覧室が利用できる。閲覧室内の参考図書を含む開架図書と、書庫の図書などを閲覧・コピーできる仕組みになっている。関西館は、東京本館と同様、図書の貸出をしていない。閲覧と複写のみに限定されている。収蔵内容からいって、研究者向けの図書館であり、研究者には個室が用意されている。書庫の三層分が広く、自動書庫もあり、図書の閲覧を請求すると15〜20分待たされる。まあ、これは、建物の構造上、あるいは、所蔵している資料の性格上やむをえないところか。*3


関西館では、閲覧の請求や複写依頼などは手書きではなく、閲覧席上にはパソコンが備え付けてあり、すべてパソコン上で操作をする。また、請求した図書の到着状況が入力段階で館側が把握し、表示パネルがあり、請求した資料の出庫状況がわかる。広大な書庫、膨大な図書資料の出庫を少しでも早くするための工夫がなされている。東京本館と較べてみれば、このあたり理解されるだろう。関西館では、退館時に「利用者カード」は回収される。当日限りのチケットのようなものだ。


市民利用者としては、国会図書館に利用登録しておくと、NDL-OPACで検索し、コピーの請求ができる。資料が、東京本館か関西館かにかかわらず、文献複写のみのサービスを受けることができる。ただし、資料の貸借は最寄の図書館を経由して利用する方法しかない。


国家的規模での図書資料の収集は、周知のとおり納本制度によって原則的には網羅的に収集されていることになっている。自費出版はどうか心配したが、毎日多くの自費出版物が届くという。すると、収集から漏れる図書とは、何だろうか。取次や地方小出版流通センター扱いの図書は自動的に納本されるというから、通常の出版ルートにのらないもので納本の意思がない図書が納本されていない可能性がある。「文科省科研費報告書」は、現在では所属する当該大学から納本することが義務つけられている。しかし、必ずしも全てが納本されているということではないようだ。


関西館のロケーションについては、京都・大阪・奈良からアクセス可能だが、なんとも不便な場所にある。せめて、JR学研都市線近鉄京都線沿いに最寄の駅が欲しいところである。バスへの乗り継ぎで時間がとられる。博士論文のオリジナルを直接見たい、あるいは、科学技術資料やアジア言語・アジア資料関係図書の直接閲覧を希望する場合は、関西館へ直接足を運ばなければならない。


一般市民としては、NDL-OPACによる資料確認と雑誌論文の検索・複写の利用と、「近代デジタルライブラリー」などの電子図書館サービスにとどまることになろう。国立国会図書館の東京本館と関西館のつながりや、国会図書館の構造が多少なりとも理解できたことが収穫であった。


大学図書館の場合には、NII(国立情報学研究所)というネットワークの中心的役割機関がある。国立国会図書館が、各地の公共図書館とのネットワークのなかで、蔵書の横断検索などのシステムが構築され、公共図書館Webcatができることを期待したい。現在は「総合目録ネットワークシステム」がある。*4なにしろ、個人が収書できる範囲は限定されているのだから。その意味で、国民のための図書館として、すべての機能が揃うことを望んでもいいだろう。あらゆる資料は、国民に開放されなければならない*5


利用の詳細は、以下のホームページで確認ができる。しかし、モノとしての国立国会図書館・関西館の存在を見ておくことは、いい経験になった。


国立国会図書館

国立国会図書館関西館

総合目録ネットワーク


■参考:関西館を知るために

国立国会図書館関西館の建築

国立国会図書館関西館の建築

*1:一般の利用者には、「参観」として、午前1回・午後1回行われているので、見学をお薦めする。

*2:ちなみに地下2・3・4階書庫の空調は、22度、湿度55%で、本の保存をしていた。人間(とくに私の部屋)の環境よりはるかに良い。本を永久保存するためには、ここまで徹底しなければならないということ。

*3:書庫は東西に120mの長さがあり、積層式書架や電動式書架から本を取り出し、利用者へ提供する。また、自動書庫は搬送に時間がかるため、15〜20分くらい待つことは許容の範囲内であろう。

*4:都道府県立図書館の一部、政令指定都市立図書館の一部が所蔵する和図書の総合目録データベースシステムとして稼動中。

*5:。「文字・活字文化振興法案」なるものが国会で審議されているらしい。文字や活字文化の振興は、法律で決めることだろうか。公共図書館が少ない。図書費は削減される。公共図書館の民営化、専門職の不在等、「日本図書館協会」7月8日の声名に共感する。