オヤジ国憲法でいこう!


オヤジ国憲法でいこう! (よりみちパン!セ)

オヤジ国憲法でいこう! (よりみちパン!セ)


しりあがり寿祖父江慎著『オヤジ国憲法でいこう!』(よりみちパン!セ理論社)は、実に説得的かつ分かりやすい内容で、ヤング諸君にぜひ読んでいただきたい本になっている。私自身は、既にオヤジ世代であり、もし、少年時代にこのような本との出合いがあれば、どんなにか肩の荷がおりただろう、と思わせる。

オヤジ国憲法
第一条 個性ハ必要ナシ
第二条 友達ハ大切ナモノニアラズ
第三条 恋愛はロクナモノデナシ
第四条 真理ヤ理想ハ幻想ナリ
第五条 ヤングノ敵ハ隣室ニアリ

とりわけ、オヤジ世代にも納得できることは、第四条でありその「概要」部分を以下に引用する。

いくら耳に心地良い「真理」や「理想」であったとしても、何人も、それを「唯一絶対なもの」「不変である正義」と押しつけられてはならない。押しつけられている時点で、それはたいてい幻想であったり、誰かの妄想であったりする。我々が平和のうちに生存する権利を行使するためには、「ちょっとうまくいってないこと」は追放せず、良い意味での「いいかげん」な態度でそれらに付き合っていくことが必要条件であることを確認する。(p.109)

けだし、名言である。「真理」や「理想」を、「神」に置き換えてもいいだろう。
第五条の第15項は「お父さんは家族を守れません」は、世間の実態を説明している。

父親とは、社会や、社会が要求しているモラルのようなものを、家庭の中でただ「代理」するような存在なのではあるまいか。しかし、家庭に「社会」を持ち込む役割のお父さんが、それこそ実社会で、リストラのような目にあえば、悲惨である。(p.164)
・・・(中略)・・・
親がずっと、親の役割のままでいられなくなったとしても、その時はどうか、許してやってほしいと、ワシは思う。(p.165)

男はつらいよ」ではないけれど、「オヤジはつらいよ」なのだ。
オヤジ国憲法補足には、オヤジ世代からのエールが込められている。

ヤングよ。キミらは、生きているだけでもう、すごいのである。とりあえず、ヤングが多少悩んでいようが、混乱していようが、キミらのひとりひとりが「いま」「ここ」に生きているという奇跡を、心から祝福するものである。(p.171)

「オヤジは最高」(憲法前文)なのである。若さがすべてではない。誰もが自然に老いて死ぬことから逃れられない。「生病老死」とは、仏教でも「四苦」といわれる。若く、元気であることが「奇跡」なのだ。本書は、いずれ「オヤジ」になる「ヤング」へのオマージュ本なのだ。