姑獲鳥の夏
京極夏彦の『姑獲鳥の夏』を、実相寺昭雄が映画化した。この種の映画としては、市川崑の『金田一耕助』シリーズを想起させるが、探偵もの映画としては、戦後の時代を示す建物のセットや風景の美術はよくできているし、論理的な語りを朗々とみせる堤真一の京極堂と、ワトソン役の永瀬正敏の作家・関口、超能力で透視する探偵・阿部寛、京極堂の妹雑誌記者・田中麗奈など、キャスティングがまず魅力的だ。
京極堂の書斎や、眩暈坂のセット、久遠寺医院などは、見事なセッティングであるが、惜しむらくは、照明がTVや舞台のように平板になっており、映画の内容からもっと陰影のある照明がほしいところだ。
粉川哲夫は、堤真一の京極堂はミスキャストであると指摘しているが、養老孟司の唯脳論を敷衍したような科学論的言説、「この世には不思議なことなど何もないのだよ、関口君」といながら、「憑きものはずし」を行うという原作自体の矛盾は、まあこの際、無視するならば、まずまずの出来であり、それなりに楽しく観ることができた。
一番怖かったのは、いしだあゆみの容貌であったことを付記しておきたい。
■実相寺昭雄監督作
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