日本十進分類法新訂10版


日本の公共図書館大学図書館学校図書館など、多くの図書館が採用している「日本十進分類法(NDC)」は、新訂9版が1995年に刊行され、約20年が経過している。


日本十進分類法

日本十進分類法


NDC新訂10版、奥付2014年12月25日付けの2冊本を、やっと入手できた。『新訂10版』と『図書館雑誌(2015年2月)』の説明をもとに、以下見てみよう。


20年後の2015年、本を取り巻く環境は、一変した。『新訂9版』までは、本・資料の書架分類のための分類法であったが、『新訂10版』は書誌分類を指向しているという。


第一分冊は「本表・補助表編」、第二分冊が「相関索引・使用法編」で構成されている。


『新訂10版』の大原則は、NDCの根幹にかかわる体系の変更をしない、書架分類より書誌分類を目指す、新主題を追加する、全般にわたり必要な修正・追加をすることであると云う。

内容を見ると、まず「補助表」の変化が目についた。
一般補助表にあった「言語共通区分」と「文学共通区分」は、それぞれ言語(800)と文学(900)の固有分類において使用するので、一般補助表から外し、固有補助表に移している。


さらに、9版では時代区分が補助表になかったのを、日本地方史の時代区分として固有補助表を新たに設けた。これで、一般補助表は、「形式区分」「地理区分」「海洋区分」「言語区分」の4種となり、固有補助表を9版の6種から、「日本地方史の時代区分」「言語共通区分」「文学共通区分」を加えて10種に再編している点が大きな改訂になっている。


日本十進分類法

日本十進分類法


例えば、補助表の再編をせずに9版のままとし、時代区分のみ一般補助表に加えるという方法もあった。


私見を云えば、9版で隠れていた時代区分(-03古代、-04中世、-05近世、-06近代)を、一般補助表として付加することで、他は変えずに補助表を簡素化できたのではないかと思う。


新訂10版は、書架分類よりも書誌分類を重点を移行したため、「分類規程」を見直したと記している。

「分類規程の見直しを図り、従来書架分類のための指針とされてきた規程を、著作の種愛情報について分析的、合理的に明確にするための基準とみなし、書架分類はそこで得られた分類記号から、個別資料の配架のために最も適切なものを選ぶという考え方で作成した」(序説37頁)


しかし、「使用法」で「分類規程」を読む限り、9版とは項目順序の入替えはあるが、基本的内容は、ほぼ新訂9版を踏襲している。すなわち、書誌分類を複数付与しても、資料一点の配架先を決める書架分類は、一つとなるので、結果としてはさぼど変わらないということになる。


次に、「相互索引」についてだが、この整備が最も現状を反映している。索引語のレコード数として9版の約29,500件に対し、本表の改訂に伴い、約33,400件に増加してる。


9版が刊行された1995年とは、Windows95が発売された年であり、「インターネット」という言葉は、対象となっていなかった。学問分野も20年経過すれば、随分変化している。大学そのものが、実学志向的を強化し、やれ国際だの情報だのある種、時代を反映しているような言葉を使用した学部、学科が多くなってくる時期だった。


NDCの10区分を以下に示すが、基本的に大枠の変化はなく、「別法注記」を数多く採用し、各図書館対応となる箇所が多くなっている。


0 総記(情報学・図書館・百科事典・逐次刊行物・団体・ジャーナリズム・叢書)
1 哲学(心理学・宗教を含む)
2 歴史(伝記・地理を含む)
3 社会科学(政治・法律・経済・統計・社会・教育・風俗習慣・国防)
4 自然科学(数学・理学・医学)
5 技術(工学・工業・家政学
6 産業(農林水産業・商業・運輸・通信)
7 芸術(音楽・演劇・スポーツ・諸芸・娯楽を含む)
8 言語
9 文学


情報学および関係領域が、9版では時代にそぐわなかった。情報学そのものは、学際的な分野であり、9版では、ソフト系を007(情報科学)、ハードウェア系を548(情報工学)へと分けていた。


10版の情報学は、情報学一般が007、工学・技術的な観点を547(通信工学)/548(情報工学)に収め、産業・経営・事業に関する観点を694(電気通信事業)に収めている。別法として、007と548に対応する主題を、007.8に集めることなどを可能にしている。


情報学関係は、もっともらしく収めているように見えるが、9版の大まかさで対応できるのでないか。10版では、少々複雑になり過ぎていて、一般利用者には、分かりにくいのではと、余計な心配をする。


ところで、『新訂10版』の大きな特徴が、編者・諸氏が解説するような簡潔・明瞭さに落ち着いているのかどうか。どうも、図書館内部の理屈に依存しすぎてはいないだろうか?


書物の環境論 (現代社会学ライブラリー4)

書物の環境論 (現代社会学ライブラリー4)


柴野京子氏によれば、出版市場規模は、30年前に戻っているとの指摘*1がある。出版市場とは、書籍と雑誌の販売・流通であり、特に雑誌の落ち込みが激しい。


セレクトショップ」や「カフェ書店」あるいは、「まちライブラリー」的な広がりも「読書」をあらたな形で創造しつつある。ネット書店や大型書店への対抗である。


日本目録規則

日本目録規則


NDC分類はあくまで、図書館のための分類であろう。9版から10版へ改訂されたNDC。
一方、「日本目録規則(NCR)」は、「1987年版改訂3版(2006)」以後、FRBR(書誌レコードの機能要件)」モデルに基づき、「RDA」(2010)を参考に、「新NCR」が日本図書館協会国立国会図書館の協力で進捗しつつあり、2017(平成29)年に「新規則」として公開が予定されている。


RDA入門―目録規則の新たな展開 (JLA図書館実践シリーズ 23)

RDA入門―目録規則の新たな展開 (JLA図書館実践シリーズ 23)


NDCとNCRの連携も必要であろうが、FRBRモデルを取り入れる「目録規則」とは、もはや実体的な目録規則ではなく、「書誌情報資源の記述とアクセス」というようなRDA風の名称になるのであろうか。


情報資源組織論 (現代図書館情報学シリーズ)

情報資源組織論 (現代図書館情報学シリーズ)

情報資源組織演習 (現代図書館情報学シリーズ)

情報資源組織演習 (現代図書館情報学シリーズ)


いずれにせよ、『NDC新訂10版』に対応したテキスト(教科書版)はまだ改訂されていない。該当する教科は、司書科目では、『情報資源組織論』『情報資源組織演習』の二科目であり、司書教諭科目では『学校図書館メディアの構成』の一科目が対応する。


学校図書館メディアの構成 (放送大学教材)

学校図書館メディアの構成 (放送大学教材)


以上のことは、テキスト(教科書版)」の改訂を待って言及すべきことかも知れない。テキストの早期改訂が待たれる。

*1:柴野京子「読者はどこにいるのか」『図書館雑誌』2015.2、p84-86