図書館法施行規則を改正する省令
2009年4月2日付けで、文部科学省は司書科目の改正の省令告示にあたって、再度、パプリック・コメントを募集している。締切は4月22日。個人的な意見も受け付け可であり、公共図書館関係の方は、ぜひ現場の意見を提案されることを期待したい。
案件番号185000396 「図書館法施行規則の一部を改正する省令案について」
http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=Pcm1010&BID=185000396&OBJCD=100185&GROUP=
なお、この意見募集は、2月18日の正式な報告書を受けて、再度省令告示前に意見公募を行うものであり、慎重を期してるのか、あるいは、形式的に意見公募をしてるのか定かではないが、「司書資格取得のために大学において履修すべき図書館に関する科目の在り方について(報告)」(平成21年2月これからの図書館の在り方検討協力者会議)の内容が反映されている。
「報告書」は文部科学省のHPに掲載されている。
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shougai/019/index.htm
いずれにせよ、公共図書館の「司書」が目指すべき省令科目(13科目、24単位)になることに、変更はないだろう。公共図書館が「図書」中心から「情報資源」中心に移行することは確かだ。
拙ブログで、既に二回、本件について意見の述べているので、繰り返すことは避けるが、公共図書館の「司書」の在り方が根底的に変容しようとしている。公共図書館自体が、「指定管理職制度」の導入等で、現場サイドが大きく変化していることは周知のとおりである。一番大きな問題は図書費の削減であり、2008年度都道府県別の予算が各県ほとんどが削減されていて、例えば、いま注目されている大阪府は、 21,150千円削減され122,085千円になっている。
ちなみ、第1位・東京都255,607千円(13,924千円増)、第2位・岡山県217,291千円(11,188千円減)に次いで、都道府県別で大阪府は第3位に位置している。人口比から言えば、岡山県と鳥取県105,496千円(2007年度と同額)が突出している。(日本図書館協会HPより)
http://www.jla.or.jp/statistics/siryohi2008.htm
図書館法第2条に
「図書館」とは、図書、記録その他必要な資料を収集し、整理し、保存して、一般公衆の利用に供し、その教養、調査研究、レクリエーション等に資することを目的とする施設
と記されており、国民がひとしく図書資料の利用ができることが大原則であるとすれば、現実は地域によってかなり不平等になっている。まず自分が所属する地域の公共図書館の図書資料費を確認することを薦めたい。
いまひとつ気になる点は、電子資料の保存問題である。パッケージ系電子媒体にせよ、ネットワーク系にせよ、インフラの崩壊(例えば出版社が倒産等でサーバへのアクセスが不可能になる)によって、電子データが消滅する危険性を誰もがあまり気にしていない、ということだ。
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2009年3月9日、国立国会図書館主催「電子書籍の流通・利用・保存に関する調査研究」報告会からの、中西秀彦氏の報告「電子書籍の保存」によれば、「すべての文化遺産は、それが生まれたときから保存を考えておかねばただちに散逸してしまう。」と警告*1している。
http://current.ndl.go.jp/FY2008_research
歴史的にみて数百年単位で保存されるのは、本・書物という形式であり、この点からも図書資料よりも、情報資源にウエイトを置こうとする「省令・新司書科目」は、大きな問題を孕んでいると言わざるを得ない。ウッブ依存現象すなわち電子的情報に何の疑問をもたない能天気な人たちが、図書館の資料保存まで視野に入れているかきわめて疑問だからだ。
バルト、フーコー、デリダの名前をあげ、図書資料を「著者/テクスト」関係のゆらぎとして捉え、斬新な書誌コントロール論を展開する柳与志夫『知識の経営と図書館』(勁草書房、2009)は、文化・知的情報資源へのアクセスを構造化することに言及している注目すべき論考だが、その文化・知的情報資源の保存問題に触れられることはない。
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ウッブという「流行」を追うのは結構だが、「図書館司書」に求められるのは、ネット関係の技術ではなく、図書資料を根底のところで思考できる人物ではないのか。
利用者として、また、図書館に関心を持つ者として、司書資格のための省令科目について既に二回、拙ブログに記載したので、今回はここまでに留めておきたい。
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*1:例えば、10年以上前に発売されたCD-ROMなどはOSの環境変化のため読めないケースがあるのは、誰もが知っていることだ。中西氏は媒体変換による保存を提言しているが、本の場合は読めないことなどあり得ないことを思うと、本・書物として残すことの重要さが実感できるだろう。