図書館情報学検定試験問題集


ここで、根本彰[ほか]共著『図書館情報学検定試験問題集』(日本図書館協会、2010)が登場する。


図書館情報学検定試験問題集

図書館情報学検定試験問題集


日本図書館情報学会が実施している図書館情報学検定試験の模擬試験問題であり、解説付き練習問題として司書関係ではこのようなものはかつてなかった。試みとして大変面白い。

8分野50問出題されているが、本書が設けている8分野とは、司書養成課程の新科目に対応する形になっている。
順番に列挙すれば、

  • 「A図書館情報学基礎 1〜9問」
  • 「B情報利用者 10〜14問」
  • 「C情報資源組織化 15〜19問」
  • 「D情報メディア 20〜27問」
  • 「E情報サービス 28〜34問」
  • 「F経営管理 35〜38問」
  • 「G情報システム 39〜43問」
  • 「Hデジタル情報 44〜50問」

となっていて、「モノ」としての図書資料より「情報」が優先されている。


全体をみてまず気がつくのは、ウェブ社会を反映した問題が多い。情報の歴史や検索システムに関する問題など、どちらかと言えば、情報管理と情報検索関係の問題に力点が置かれている。図書館化する世界における図書館司書は、何をもって専門性といえばいいのだろうか。少なくとも、この問題集に掲載されている問題を解く力が、専門力と言えるだろうか。


8分野をみても、図書館資料に関する設問が少ない。資料への造詣の深さが求められるはずだが、通常の疑問など、ほとんど「検索エンジン」にキーワードを入力すれば、それなりの回答が得られてしまう。従って、図書館司書の専門性とは、ネット社会の常識を超えたところにあるのではないのか。


未来志向性としては「情報」に主体を置いてもいいが、遡及的歴史的資料の解読には「モノ」についての知見が求められる。逆ベクトルにある二つのバランス感覚を持つことが図書館化する世界における「ライブラリアンの専門性」に繋がるのではないだろうか。


書物の変―グーグルベルグの時代

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