文学の空気のあるところ


荒川洋治氏の新刊書『文学の空気のあるところ』(中央公論新社,2015)を入手、読了する。


文学の空気のあるところ

文学の空気のあるところ


荒川氏の著書から、毎回、文学のこと、詩のことについてなど、忘れられようとしている作家・作品を教わる。

昭和というか、戦後はみんなが本を読んでいる、・・・(11頁)

小説には密度があった。読むほうは密度のあるものを与えられていた。これが昭和です。(15頁)


昭和の戦後に、多くの文学全集が刊行され、家庭の書棚には、どれかが揃っていた。そのことの意味。

昭和の読書というのは、読むか読まないかではなく、必要な時には、こんな本があるという状態であったこと。


今は、読むひとより、ネットで書くひとが増えた。ブログやFacebookには、編集者が介在しない。校正もない。書きたいことをだらだらと書く、そんな時代である、と荒川氏は警句(小生もブログを書いている=恥!)を発している。


中村草田男の名句「降る雪や明治は遠くなりにけり」は、昭和6年の作。つまり明治が終焉して20年くらいの時期に詠まれた俳句である。昭和が終わり、26年が経過している。昭和が遠いという感覚ではなく、「ALWAYS三丁目の夕日」は、一種の懐古、懐かしさへのあこがれであり、「昭和は遠くなりにけり」の感覚ではない。


花ざかりの森・憂国―自選短編集 (新潮文庫)

花ざかりの森・憂国―自選短編集 (新潮文庫)


「名作・あの町この町ー地図」では、物語の始点から終点へ、日本地図の上から作品・作家を見る。この地図から、私の場合、三島由紀夫の「橋づくし」が読みたくなり、近所の本屋さんで新潮文庫を買い求めて、早速読んでみた。荒川氏の紹介がなければ、まず読むことはなかったであろう小説だ。
三島由紀夫の短編の巧みさが表現されている作品であった。収穫。


荒川氏の著書を読むと、読書の幅が拡がる。現在、新刊本を必ず購入する著者の一人となっている。


荒川洋治氏から、結城信一島村利正加能作次郎田畑修一郎など、あまり知られていない作家たちを教えられた。


奈良登大路町・妙高の秋 (講談社文芸文庫)

奈良登大路町・妙高の秋 (講談社文芸文庫)

出雲・石見

出雲・石見


過去にも『文学のこころ』『昭和の読書』『世に出ないことば』『文学の門』『文学がすき』等々、その都度、購入・読書が楽しみな現代詩作家だ。

黙読の山

黙読の山

ラブシーンの言葉

ラブシーンの言葉

文学が好き

文学が好き

文学の門

文学の門

昭和の読書

昭和の読書

文芸時評という感想

文芸時評という感想

文学のことば

文学のことば

読むので思う

読むので思う


何よりも荒川氏の「文学は実学である」という<ことば>が良い。