愛する時と死する時


ダグラス・サークのフィルモグラフィの中では異色とも言える映画『愛する時と死する時』(1958)は、戦争映画としてはめずらしく、ナチスドイツ側の世界を描いた作品である。原作者レマルクは反ナチの教授役で出演している貴重なフィルムだ。


戦場で休暇を貰ったジョン・ギャビンは、ベルリンに戻るがほとんど廃墟の街になっていた。両親を探しながら、幼なじみのリーゼロッテ・プルファーと、廃墟のなか未来が見えない状態で次第に激しい恋に落ちる。ナチス批判の映画ではなく、極限状況に置かれた男女の恋が描かれる。戦場にもどったジョン・ギャビンは、あっけなくロシアのパルチザンに射殺される。ハリウッド映画でアンハッピーエンドのフィルムを作り続けたダグラス・サークの作家的意義が十分に評価されていいだろう。



ダグラス・サークDVD-BOXで、7本の作品を観ることができるようになったことは慶賀すべきことで、既に観た7本から、ダニエル・シュミット『人生の幻影』(1984)の内容がよく視えてきた。『人生の幻影』は、『天が許し給うすべてのもの』(1956)のラシトシーンの引用から始まり、途中『風と共に散る』(1957)や『スキャンダル・イン・パリ』(1946)を引用しながら、『悲しみは空の彼方に』の葬列の引用シーンで終わる。

黒人たちが愛するにぎやかな葬列を描くことで、母親の死を嘆くスーザン・コーナーの姿が隠されるのだ。まさしくサーク的テーマが、最後のフィルムに定着していることを、ダニエル・シュミットは見抜いていたことになる。


さて、ダグラス・サークの残された作品DVD−BOX化案を以下に提案してみたい。

■ハリウッド初期の時代(DVD-BOX=3)
『パリのスキャンダル』(1945)
『誘拐魔』(1946)
いつも明日がある』(1955)

■ドイツ時代(デトレフ・ジーレクの時代)((DVD-BOX=4)
『第九交響楽』(1936)
『世界の涯てに』(1937)
『南の誘惑』(1937)


サーク・オン・サーク (INFAS BOOKS―STUDIO VOICE‐boid Library (Vol.1))

サーク・オン・サーク (INFAS BOOKS―STUDIO VOICE‐boid Library (Vol.1))