市川崑物語
岩井俊二『市川崑物語』(2006)を観る。いわゆるドキュメンタリーではなく、岩井俊二から視た市川崑と和田夏十(なっと)に関する私的なメモという印象だ。黒い画面に、白い文字で言葉が映される。まず冒頭に、三島由紀夫のことば「日本映画の一観客として、どの監督の作品をいちばん多くみているか、と訊かれたら、私は躊躇なく市川崑氏の作品と答える」を引用する。
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市川崑の生い立ちから始まり、徴兵を二度奇跡的に免れた「脊椎カリエスの話」、奥さんになる和田夏十さんとの出会いから結婚、映画作りの貴重なパートナー・脚本家となったこと。傑作の数々をたどりながら、日本映画の流れを変えた『犬神家の一族』(1976)にいたる。
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岩井俊二のコメントは、ほとんど絶賛に近い市川崑監督へのオマージュに満ちている。と同時に、市川崑と和田夏十の夫婦愛、監督と脚本家の理想のかたちを視るラヴ・ストーリーにもなっている。
通常この種のフィルムは、監督や周辺の人々へのインタビューなどで構成されるのだが、市川崑の語るところは、森遊机『市川崑の映画たち』(ワイズ出版、1994)*1に記載されているので、さほど新鮮味がない。
市川崑の映画の細部は、森遊机『市川崑の映画たち』を参照するとして、岩井俊二が子ども時代に大きな影響を受けた監督が市川崑だったことは、理解できる。リアルタイムで観た映画のインパクトは、特別だ。ライティングとカッティングの巧さ、「銀落とし」という技術を最初に使用した監督であり、彼の映画手法は、後続の多くの映画監督に影響を与えている。
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市川崑自身が、30年前の『犬神家の一族』をリメイクした『犬神家の一族』(2006)の撮影風景が一部映される。作品からの引用は少なく、字幕と映画のタイトルと写真で構成されるフィルム。
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最近、BS2で市川崑監督の金田一耕助シリーズが放映されたので、旧作の5本を見直してみたが、女優を美しく撮ることにかけては見事という他ない。シリーズ一番の傑作は『悪魔の手毬唄』(1977)であることは、衆目の一致するところだろう。主演女優が全員揃う『女王蜂』(1978)では、誰が犯人だろうという疑問がわくが、仲代達矢であることを楽しそうにバラシてしまう。
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私的には、製作順に『炎上』(1958)『ぼんち』(1960)『おとうと』(1960)『黒い十人の女』(1961)『細雪』(1983)の五本がベスト5となる。
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岩井俊二が、市川崑と共同制作する予定であったのが『本陣殺人事件』であるという。そうだとすれば、金田一耕助役は石坂浩二しかいないだろから、ここはぜひとも市川崑=岩井俊二+石坂浩二で、企画を実現して貰いたい。
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