スター・ウォーズ・エピソードⅢ シスの復讐
28年間の時間をかけた『スターウォーズ』サーガの最終完結篇。『エピソードⅢシスの復讐』(以下『EP3』の表記)は、しっかりと『EP4』につながるかたちで、すべての謎が解明された。スペースオペラとして、『スターウォーズ』ほど、他の多くの作品に影響を与えた映画はない。SFXものでは、『スターウォーズ』が原点であり、この作品を凌駕するSFXものはもはや制作されないであろうと思わせる。
『EP1』と『EP2』には、全面的にのめり込めなかったが、『EP3』は全てにおいて、このシリーズをまとめる要ともなっており、『スターウォーズ』とは、結果として、ダース・ベイダーの悲劇の生涯を描いた作品となった。
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旧三部作と新三部作をあわせた壮大なサーガは、物語の骨子としては実に単純明快なものだ。親子の葛藤、確執、父親殺し、善と悪の対立、父アナキン世代と、息子ルーク世代にわたる帝国と共和国の闘いが反復して描かれる。善は悪を倒すことで物語は終焉を迎えるが、全6部作で最も面白いのは、皮肉なことに『EP4 帝国の逆襲』と、今回新三部作で全体をまとめた『EP3シスの復讐』の二本が、作品としての質を傑出させたことは、だれもが認めるところであろう。
『EP4』で、ルークが父ダース・ベイダーと闘い、右手を切断されるシーンは、『EP2』でアナキンが元ジェダイ・マスターのドゥークーとの闘いで、右手をきられるシーンの反復であり、同じことを親子が反復していたのだ。これも、すべて『EP3』によって、解読されるという仕組みになっている。
従って、製作順に観る方法とは別に、『EP1』から順に、新三部作ー旧三部作という観方をすれば、『EP4』以下では、「謎」であったところがすべて分かり、作品の外からドラマの行方を見直すことが可能となった。『EP4』以後のダース・ベイダーが、実は苦悩に満ちた立場にいることが分かる。
『EP6ジェダイの帰還』において、ルークと父ダース・ベイダーが皇帝の眼前で闘う。ルークは、父をあくまでアナキンとして、闘う意志がない。ルークの心をダークサイドに引き入れようと皇帝が強烈なフォ−スを用いるが、殺されようとしているルークを救うのが父であった。ラスト・シーンではヨーダを中心にアナキンとオビ=ワン・ケノービの三人が並ぶほほえみかける光景で終わる。アナキンが、息子のためにダークサイドから帰還する、死とひきかえに。
それにしても、物語の骨子はシンプルそのものであるにもかかわらず、周辺に多彩な人物やドロイドを配し、物語を複雑に錯綜させ、『スターウォーズ』が背後に持つ本質的な「謎」(家族関係とは別問題)を隠蔽しているのは、なぜだろうか。
『スターウォーズ』の魅力は、背景やキャラクターの造型にあり、宇宙空間の美学は、多くの模倣を輩出することにもなる。さまざまな見方があるだろうし、28年間とはあまりにも長い時間の持続であった。
『スターウォーズ』をとおして、多くの俳優が出演し、その後ハン・ソロ役のハリソン・フォードに代表されるような、大スターが誕生している。オビ=ワン・ケノービ役のユアン・マクレガーが、その後の老賢者となるアレック・ギネスを彷彿させる名演であり、イギリス出身の演技派が、オビ=ワン役で実力・人気とも増幅されたことになる。パドメ役のナタリー・ポートマンは、『レオン』の少女役以後、ひたすら成長を続けている女優だ。若きアナキンを演じたヘイデン・クリステンセンも、ダークサイドに落ちるダース・ベイダーに変身する困難な役を見事に演じていた。
なかでも、もっもと記憶に残るのは、ジェダイ・マスターのヨーダであろう。童顔のヨーダは、新三部作での重鎮であり、後期では、『EP5』から再登場することになる。ヨーダは、フォースの力を持つ真の老賢者として、ダース・ベイダーと比肩し得る存在であることは特筆されてよい。
難をいえば、旧三部作よりも、前の時代を描いた新三部作の方が、技術の進歩のため観るものに時間観念の逆転、という錯覚に陥いらせることだ。でも、これは製作時期のズレのためであり、事後的にすべてがわかることなので許容されるだろう。
『スターウォーズ』サーガの終焉を、一種、悲哀に似た気分で観ることは避けられないことなのだ。サーガの終焉は、この物語に含まれるさまざまな仕掛けを細部にわたり点検することを要請する。でもその役割は、多くの『スターウォーズ』ヲタクによってなされるであろう。
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