マッツ・ミケルセンの牧師が異彩を放っていた!
映画ベストテン2019
恒例の映画ベストテン。今年は87本をスクリーンで見た。ベストテン選出基準は『キネマ旬報2019年12月下旬号』に掲載されている映画(2019年1月1日~12月19日公開)から、あくまで自分の眼で見た結果であり、独断と偏見によるもの。
今年は『スターウォーズ』公開42年にあたる。9部作の完結編である『スカイウォーカーの夜明け』も公開された。公開当日12月20日に見たが、結論から言えば、全6部作で完結が正解であったと思う。
キネ旬の対象外ではあるけれど。そういえば『男はつらいよ』も50周年記念として、『お帰り寅さん』が27日に公開される。これも見逃せない。
まあそれはさておき、なんとか80本はクリアできたことに安堵しよう。
【外国映画】
1.ニューヨーク公共図書館(フレデリック・ワイズマン)
2.アダムス・アップル(アナス・トマス・イェンセン)
3.グリーンブック(ピーター・ファレリー)
4.バイス(アダム・マッケイ)
5.ブラック・クランズマン(スパイク・リー)
6.ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド(クエンティン・タランティーノ)
7.ピータールー マンチェスターの悲劇(マイク・リー)
8.永遠の門 ゴッホの見た未来(ジュリアン・シュナーベル)
9.ジョーカー(トッド・フィリップス)
10.運び屋(クリント・イーストウッド)
次点:ハウス・ジャック・ビルト(ラース・フォン・トリアー)
:ROMA/ローマ(アルフォンソ・キュアロン)
【Amazon.co.jp限定】ブラック・クランズマン ブルーレイ+DVDセット(A6サイズステッカー付) [Blu-ray]
- 出版社/メーカー: NBCユニバーサル・エンターテイメントジャパン
- 発売日: 2019/10/09
- メディア: Blu-ray
ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド ブルーレイ&DVDセット(初回生産限定) [Blu-ray]
- 出版社/メーカー: ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
- 発売日: 2020/01/10
- メディア: Blu-ray
ジョーカー ブルーレイ&DVDセット (初回仕様/2枚組/ポストカード付) [Blu-ray]
- 出版社/メーカー: ワーナー・ブラザース・ホームエンターテイメント
- 発売日: 2020/01/29
- メディア: Blu-ray
フレデリック・ワイズマン『ニューヨーク公共図書館』は文句なしのベスト1。ドキュエンタリーの手法で、図書館の内側と外側を距離を持って描いた傑作である。図書館と来館者を対等に扱い、著名人であろうと一般人であろうと同じ目線だ。この視点の素晴らしさ。
『アダムス・アップル』は、2005年製作のデンマーク映画で、牧師役のマッツ・ミケルセンの演技の素晴らしさが堪能できる。マッツ・ミケルセンは、『永遠の門』でも牧師を演じて、ゴッホが病院に収容されていたとき、彼の悩みに寄り添うように話を聞く姿は、印象に残る。
『グリーンブック』から『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』はアメリカ映画。マイク・リー『ピータールー』は、<ピータールーの虐殺>を淡々と主役を敢えて立てない手法でリアリスティックに描いた作品。民主主義を求める民衆と弾圧する王政。なぜか香港で起きている現実を想起させる。
フォアキン・フェニックス演じる『ジョーカー』は、DCコミックの悪役の誕生を悲哀を帯びたピエロとして際立たせる意図と、演技に凝りすぎていることに若干の違和感を持った。
イーストウッドは、このところ実録ものを撮っているが相変わらずうまい。『運び屋』はこの位置になる。
この他では
〇女王陛下のお気に入り
〇立ち上がる女
〇ギルティ
〇マイ・ブックショップ
〇記者たち
〇ザ・バニシング(1988年作品)
〇ドクター・スリープ
〇希望の灯かり
などが気になった。
なお、ゴダール『イメージの本』は、期待したが『映画史』のような撮り方で、160本以上の映画が引用され、絵画・言葉などとともにコラージュされている。しかし、この手法は『映画史』で十分表現されたので、商業映画に戻るべきだろう。
同じ年齢のクリント・イーストウッドとゴダールは、毎年一本映画を撮っている。老いてなおエネルギーが凄い。
【日本映画】
1.新聞記者(藤井道人)
2.宮本から君へ(真利子哲也)
3.旅のおわり世界のはじまり(黒沢清)
4.長いお別れ(中野量太)
5.火口のふたり(荒井晴彦)
6.ひとよ(白石和彌)
7.カツベン(周防正行)
8.決算!忠臣蔵(中村義洋)
9.記憶にございません(三谷幸喜)
10.町田くんの世界(石井裕也)
次点:天気の子(新海誠)
『新聞記者』は安倍政権批判の映画。忖度ばやりの状況の中で、よくぞここまで踏み込んだ。評価に値する。
『宮本から君へ』は、熱量が半端ない迫力で、最近の冷めた映画が多いなかでは、貴重な作品。池松壮亮は主演男優賞、蒼井優は主演女優賞もの。
黒沢清『旅のおわり世界のはじまり』は、ウズベキスタンロケによるロードムービー。前田敦子は好演。彼女は『町田くんの世界』では、醒めた高校生を演じて絶妙。
『火口のふたり』は、荒井晴彦の世界を、柄本佑と瀧内公美が監督の期待に応え熱演してた。
周防正行『カツベン』は、日本独自の活動弁士に光を当て、映画内・無声映画も周防監督自らが撮ったもの。コミカルタッチは、この人の作品歴から当然の力量を示していた。石井裕也『町田くんの世界』は、不思議な世界を監督が不思議な世界へ誘っていて秀逸。
コメディが好きなので、二本入った。『決算!忠臣蔵』は、討ち入り費用に着目、実際膨大な金銭がどう使われたのか興味深い。もちろん、討ち入りシーンは演習のみ。討ち入り後の世評の高さを、義士たちは予測し得ただろうか。面白い。岡村隆史がはまり役で、助演賞ものだった。ちなみに、助演女優賞は松岡茉優だろう。松岡茉優は『ひとよ』の稲村園子役と『蜂蜜と遠雷』の栄伝亜夜役で、受賞してもいい出来だった。
この他では
〇映画めんたいぴりり
〇楽園
〇人間失格
〇コンフィデスマンJP
〇洗骨
〇ダンス・ウイズ・ミー
〇蜂蜜と遠雷
〇翔んで埼玉
などが気になった。
山田洋次監督『男はつらいよ お帰り寅さん』を公開日に見た。如何に渥美清の寅さんを映像に復活させるかに注目されたが、本作の基本は光男(吉岡秀隆)と再会した泉(後藤久美子)の展開に焦点を当てている。光男やさくら(倍賞千恵子)が回想するシーンに、寅さんが甦るのだが、実に見事に映画内に収まっていた。あのメロン・シーンもしっかり引用されていた。この作品は感動ものだ。