街場の現代思想
- 作者: 内田樹
- 出版社/メーカー: NTT出版
- 発売日: 2004/07
- メディア: 単行本
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最近、「文化資本」なるキーワードで話題となっている『街場の現代思想』(NTT出版)。内田おじさんは言う。社会の階層(階級ではない)分化がより拡大する方向に進んでいる。「文化資本」を持てる一部の者と、持たざる多数者に別れると。
「文化資本」なることばは、ブリュデューからきているのだが、そして、若者の質問に答えるというかたちで、労働や結婚・離婚や学歴などについて解説しているが、街場のおじさんの結論は、以下のことばにつきる。
今の時代がしんどいのは、若い人たちに「未来がない」からである。もっとはっきり言えば、若い人たちが「死んだ後の自分」というものを自分自身の現在の意味を知るための想像上の観測点として思い描く習慣を失ってしまったからである。(p238)
自分がどういうふうに老い、どういうふうに病み衰え、どんな場所で、どんな死にざまを示すことになるのか、それについて繰り返し想像することである。困難な想像ではあると思うけれど、君たちの今この場での人生を輝かすのは、尽きるところ、その想像力だけなのである。(p239)
うーん、生きにくい世の中だ。若者もおじさんもベクトルは異なるが同じ問題を抱えている。内田おじさんは、学問と経験によるコモンセンスを説いている。
蛇足ですが、内田おじさんのコモンセンスは、「私たちの時代、私たちの棲む地域、私たちの属する社会集団に固有の『民族誌的偏見』にすぎない」イデオロギーのもとで無意識のうちに「常識」と感じられる言説であるのは、申すまでもないことです。繰り返しになりますが、ニュートラルな言説などない、ということです。