モーパッサンは面白い

わたしたちの心

 

ブヴァールとペキュシェ

ブヴァールとペキュシェ

 
フロ-ベール『ブヴァールとペキュシェ』(作品社,2019)の読書とともに、どういわけか、師フローベールによって激賞された『脂肪の塊』から、モーパッサンの短編・編群にのめり込み、『わたしたちの心』(岩波文庫,2019)に遭遇することとなった。
 

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わたしたちの心

『わたしたちの心』は、モーパッサンの遺作でありながら、遺作とは思えな内容。

19世紀の男と女の心理的かけひきが、如何ともしがたい状態に陥り、そこから抜け出せない奇妙な関係、それは自立した女性に翻弄される男性というきわめて現代的な問題として、きわめて斬新な作品として甦ったといっても過言ではない。

 

『わたしたちの心』がモーパッサンの最後の長編とは思えないほど、若やいだ官能と苦痛を描いている。趣味人マリオは、社交界に君臨するビュルヌ夫人に魅せられ、人生を翻弄されることになる。


第二部の終末に至り、やっとビュルヌ夫人への別れの手紙を書き、パリを離れ、フォンテーヌブローに居を構え、若きエリザベトと出会う。やすらぎを得たかと思いきや、田舎まで蠱惑的なビュルヌ夫人がやってくる。そしてまたも、夫人に惑わされ、パリへ行くことになりそうだ。


読む者にとって、死を前にしたモーパッサンが、このような濃密な恋愛遊戯劇を書いたとは、どうしても考えられない。とりわけ、師の『ボヴァリー夫人』に影響を受けたであろうと思わせる『女の一生』を書きながらも、遺作は、『わたしたちの心』であったことが、逆にモーパッサンらしいのかも知れない。

 

 

宝石/遺産 (モーパッサン傑作選)

宝石/遺産 (モーパッサン傑作選)

 

  光文社古典新訳文庫の二冊『脂肪の塊/ロンドリ姉妹』『宝石/遺産』、岩波文庫モーパッサン短編選』を読了する。

 

モーパッサン短編集(一) (新潮文庫)

モーパッサン短編集(一) (新潮文庫)

 

 短編「首飾り」と「宝石」は、よく似た妻の宝石に関するお話。モーパッサンの短編には「落ち」があり、読者としては、読む楽しみがある。

 

ボヴァリー夫人 (河出文庫)

ボヴァリー夫人 (河出文庫)

 

 師のフロ-ベール『ボヴァリー夫人』は、はらはらしながらも読了できたが、遺作となった『ブヴァールとペキュシェ』は、読書が進捗しないのだ。著者の意図するところは解かるのだが、物語としては愚鈍な試みの連続にうんざりしてしまう。いまだ読書中だが、途中から、モーパッサンに横滑りしてから、次々と文庫本を読了してしまうほど面白い。かつ現代においても、同じような人間の生活がある。

 

女の一生 (光文社古典新訳文庫)

女の一生 (光文社古典新訳文庫)

 いいま

新潮文庫の『モーパッサン短編集』全三冊を読む楽しみが残されている。奇しくも、いま、<読書週間>が始まっている。

 

モーパッサン短編集(二) (新潮文庫)

モーパッサン短編集(二) (新潮文庫)

 

 

 

モーパッサン短編集(三) (新潮文庫)

モーパッサン短編集(三) (新潮文庫)