本の収穫2014
恒例の書物の収穫について、ブログで触れてきた本以外の収穫として、以下に順不同で記載する。
◎トマ・ピケティ著・山形浩生[ほか]訳『21世紀の資本』みすず書房,2014
- 作者: トマ・ピケティ,山形浩生,守岡桜,森本正史
- 出版社/メーカー: みすず書房
- 発売日: 2014/12/06
- メディア: 単行本
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申すまでもなく今年一番の話題作だ。「はじめに」を読んだところで未読図書に置いてある。
「r>g」
資本収益率(r)が経済成長率(g)を上回るとき、資本主義は自動的に、恣意的で持続不可能な格差を生み出す。 この結論を200年間の蓄積された資料によって証明している。
本書については、拙ブログで言及するまでもあるまい。
◎松宮秀治著『文明と文化の思想』白水社,2014
- 作者: 松宮秀治
- 出版社/メーカー: 白水社
- 発売日: 2014/07/25
- メディア: 単行本
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松宮氏といえば、『芸術崇拝の思想』白水社,2008、
『ミュージアムの思想 新装版』白水社,2009
の二冊を想起する。
◎石岡良治『視覚文化「超」講義』フィルムアート社,2014
- 作者: 石岡良治
- 出版社/メーカー: フィルムアート社
- 発売日: 2014/06/26
- メディア: 単行本
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◎和田敦彦『読書の歴史を問う 書物と読者の近代』笠間書院,2014
- 作者: 和田敦彦
- 出版社/メーカー: 笠間書院
- 発売日: 2014/07/28
- メディア: 単行本
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- 作者: 中村昇
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2014/01/11
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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- 作者: 川本三郎
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2014/12/22
- メディア: 単行本
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◎蓮實重彦『「ボヴァリー夫人」論』筑摩書房,2014
拙ブログ9月05日に言及した。
◎柄谷行人『帝国の構造』青土社,2014
拙ブログ9月20日に言及した。
年末に届いた二冊。
- 作者: 東京女子大学丸山眞男文庫
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2014/12/26
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- 作者: 蓮實重彦
- 出版社/メーカー: 羽鳥書店
- 発売日: 2015/01/05
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■以下は、旧刊であるが、シュティフターに出会えたことは大きな収穫であった。
○アーダーベルト・シュティフター著、手塚冨夫、藤村宏訳『水晶 他三篇―石さまざま 』岩波文庫,1993
○シュティフター著、宇多五郎、高安国世訳『ブリギッタ・森の泉 他1篇』岩波文庫,2011
○シュティフター著、山崎 章甫訳『森の小道・二人の姉妹』岩波文庫,2003
- 作者: シュティフター,手塚富雄,藤村宏
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1993/11/16
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- 作者: シュティフター,宇多五郎,高安国世
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2011/03/17
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- 作者: シュティフター,山崎章甫
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2003/02/14
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アーダーベルト・シュティフターの短編集『水晶』は、山の静謐さと荒々しさを描きながら、村の共同体の力強さを知ることになる秀作である。
『水晶』は、自然描写が冒頭から延々と続く。これは、村の自然についてあらかじめ読者に知らせることで、二つの村の若者、すなわちクシャイトの靴屋の青年とミルスドルフの染物師の娘が、結婚することにより隣村に嫁いだ娘が母となるが、二人の子供は、母の故郷に頻繁に帰省させていることが、その後の事件の伏線として提出される。
あるクリスマスの前日、妹ザンナと兄コンラートは、いつものように、山を超えて祖父母のもとを訪れる。帰りは何度も通っている馴染みの道だが、雪が降り始め、二人は氷の山中に閉じ込められる。少女ザンナは、兄の言葉に「そうよ、コンラート」と答え、兄に従い、寒さに耐えながら、時間が過ぎて行く。遭難しかけた二人は、村の共同体の力によって救出される。クシャイトではよそ者であった母と兄妹は、村の共同体に承認されるというハッピーエンドの結末を迎えることになる。
シュティフターは、「水晶」を含む短編集『石さまざま』の序文の中で次のように述べている。
科学というものはただ一粒々々を根気よくあつめるものであり、観察をつみかさね、個々のものから普遍を構成するのである。つまり現実の総量と事実の原野は無限に大きい。いいかえれば、神は探究の喜びと幸とを無尽蔵にしておいたのであり、そのためにわれわれはわれわれの仕事場においていつもただ個々のものを描き出すことしかできず、普遍的なものをあらわすことはできないのである・・・(p282『水晶他三編』)
きわめて禁欲的なシュティフターの心意気やよしと言うべきだろう。
『ブリギッタ・森の泉』『森の小道・二人の姉妹』も併せて読了したが、何だろう、この純粋・無垢な世界は。見返りを求めない姿勢。宗教的(キリスト教的)な雰囲気は、心が洗われるなどの凡庸な言葉を拒絶している。ひたすら、自然のなかへ無私の姿勢で、読むしか方途はない。
道徳的な教訓を求める必要はない。シュティフター自身の経験が反映されているのは間違いない。
今年、シュティフターと出会えたことの幸福感は、無上の喜びであった。