現代思想史入門
船木亨著『現代思想史入門』(筑摩新書、2016)を読了した。著者は、生命、精神、歴史、情報、暴力の五項目に分け、冒頭に一覧表を掲げ、序章「現代とは何か」に始まり、「おわりに」で結論をもってきている。
- 作者: 船木亨
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2016/04/05
- メディア: 単行本
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基本的な思考は、フーコー『言葉と物』『臨床医学の誕生』などに依拠しているようだ。
- 作者: ミシェル・フーコー,Michel Foucault,渡辺一民,佐々木明
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1974/06/07
- メディア: 単行本
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- 作者: ミシェル・フーコー,Michel Foucault,田村俶
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1975/02/01
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- 作者: ミシェル・フーコー,斎藤環〔解説〕,神谷美恵子
- 出版社/メーカー: みすず書房
- 発売日: 2011/11/10
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そして現代思想は、ドゥルーズ=ガタリ『千のプラトー』以後、重要な書物が発行されていない、と著者は言う。
- 作者: ジルドゥルーズ,フェリックスガタリ,Gilles Deleuze,F´elix Guattari,宇野邦一,田中敏彦,小沢秋広
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 1994/09/01
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- 作者: ジル・ドゥルーズ,フェリックス・ガタリ,市倉宏祐
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 1986/05
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情報ネットワーク時代、個人はウェブ端末に接続し、コミュニケーションを交わし、SNSに繋がり、言説を書く、しかしそれらはサイボーグ的情報の断片に留まらざるを得ない。かかる事態こそ、現代思想の終焉にほかならない。
哲学は、カント哲学、ヘーゲルの歴史哲学で終わっている。以後、哲学は科学にとってかわられ、哲学は現代思想という概念に変貌したわけだ。
それにしても、本書から得られる現代思想は、著者の切り口によってほぼ論じられている。その点では、特に異論はない。個々の細部に関してもおおむね、著者の解説を否定はしない。
しかしながら、そこから感じられる<一種のむなしさ>を禁じえないのは何故だろうか。
私的な考えだが、哲学はヘーゲルの「精神」は弁証法的に「世界精神」という頂点に達して終わる。イエナに凱旋する馬上のナポレオンに「世界精神」をみたヘーゲルにも、歴史的構造的限界があった。
現代思想は、フロイトによる「無意識」と、マルクスの経済学批判、ソシュールの言語シニフィエとシイフィアンに思考法としてはつながっている。
- 作者: ジグムント・フロイト,懸田克躬
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 1973/11/10
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- 作者: マルクス,城塚登,田中吉六
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1964/03/16
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- 作者: フェルディナン・ド・ソシュール,小林英夫
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1972/12/22
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ソシュールの言語学を、「シニィフィエなきシニフィアン」として、ラカンは精神の象徴界で逆立ちさせて使用した。マルクスが、ヘーゲル的弁証法を逆立ちしたもの、として顛倒させたことと同断である。
だが、マルクス思想は、マルクス主義を逆立ちさせたスターリニズムとなって敗北した。また、ラカンは、精神分析の範囲から文学者の分析に応用されるが、それが、新たな哲学になるわけではない。
<生命政治>として捉えられた人間という種では、個人の意識が否定される。
本書の付加価値は、新書にもかかわらず、巻末に詳細な「人名・書名索引」と「事項索引」が付されていることである。
通常、洋書には巻末索引が付されている。しかし残念ながら、日本語の書物は、通常の出版物に「索引」が付されていることはまずない。専門図書が(それも全てでhない)辛うじて、「索引」を付けている状態だ。まして、文庫・新書に、「人名・書名索引」と「事項索引」が付されていることは希有なことと言わねばならない。
なお、「事項索引」で多いのは、「進化論」「生命政治」「普遍的登記簿」「実存」「構造主義」「古代ギリシア」「イデオロギー」「マルクス主義」「空間」などであった。「人名索引」では、デカルト、カント、ヘーゲル、ニーチェ、マルクス、フロイト、ベルクソン、ソシュール、サルトル、ハイデガー、メルロ・ポンティ、フーコー、ドゥルーズ、ガタリとなっている。ドゥルーズ=ガタリの著作を現代思想の最後と評価していることの表れであり、デリダへの言及は少ない。
- 作者: アンリ・ベルクソン,真方敬道
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1979/07/16
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「人名・書名索引」は申すまでもないが、「事項索引」は、著者がどのような分野に記述の重点を置いているかが、明確に示される。「索引」作成作業も大変であるが、自著の内容・書記層がどこに置かれているかを示す点で、あえて「索引」を付けない本が多いことを申し添えておこう。