『WOOD JOB !神去なあなあ日常』


神去なあなあ日常

神去なあなあ日常


日本映画の上半期収穫のもう一本は、矢口史靖監督の『WOOD JOB !神去なあなあ日常』(2014)であった。これも原作は三浦しをんの仕事小説。大学受験に失敗した染谷将太は、林業体験の広告モデルとなっている長澤まさみにあこがれ、携帯電話も通じない山中に、研修生として参加する。


林業の現場を映画化するというのは、ドキュメンタリー以外では初めてではないだろうか。木を育て、成長させ、伐採する。その過程に、現場作業の日常がある。世代を超えて木を育てるための、林業。前世代が育てた木を切る。現在は、電動ノコギリで切り目を入れ、反対側から斧で楔を打ち込む。このような作業を、伊藤英明扮する林業労働の先導が、研修生に厳しく指導する。


本篇は男の世界であるが、支える家族には、伊藤の妻に優香、光石研の妻に西田尚美、小学校の先生は長澤まさみ。彼女たちは、化粧っ気なしで、村の住民になりきっている。


染谷将太は、所詮よそ者だ。へなちょこの若者が、山場の労働者の仲間に教育され、一人前の現場労働者に育って行く。都会に帰った染谷が、材木の香りに釣られて決断するラストは心地良い。


スウィングガールズ スタンダード・エディション [DVD]

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本来、ドラマや映画化とは一番遠い題材を、映画化する。矢口史靖のこれまでの作品もそのような、映画のテーマとして、新鮮な男たちのシンクロナイズドスイミングを扱っ『ウォーターボーイズ』(2001)、女性徒たちのジャズバンドを描いた『スウィングガールズ』(2004)など、特殊なジャンルに挑戦する監督として、期待度は高く、いずれの作品も常に新しいテーマを見い出し、若者たちが成長するドラマとしての映画に仕上げる。その手腕は貴重であり、得難い映画監督であるといえよう。


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