本の逆襲


内沼晋太郎『本の逆襲』(朝日出版社,2013)は、きわめて刺激的な本だ。


本の逆襲 (ideaink 〈アイデアインク〉)

本の逆襲 (ideaink 〈アイデアインク〉)


新しい「本屋」への試みを、ブックコーディネーターとして、下北沢で、B&Bという本屋を実際に経営しながら、毎日イベントを開催するという、出版業と本を峻別する著者の提案の書であり、「本屋開業」記録である。

と同時に、「これからの本について考えるために」と題された、第三章がまさしく<本の逆襲法>そのものであった。


  1. 本の定義を拡張して考える
  2. 読者の都合を優先して考える
  3. 本をハードウエアとソフトウエアに分けて考える
  4. 本の最適なインターフェイスについて考える
  5. 本の単位について考える
  6. 本とインターネットについて考える
  7. 本の国境について考える
  8. プロダクトとしての本とデータとしての本を分けて考える
  9. 本のある空間について考える
  10. 本の公共性について考える

佐野眞一『誰が「本」を殺すのか』や『電子書籍の衝撃』に対するアンチテーゼである、と内沼氏は述べる。


だれが「本」を殺すのか

だれが「本」を殺すのか


たしかに、下北沢といういわば特権的な街。東京という出版界の周辺で、<本とビールと家具>を売ることは、斬新な試みであろう。実際、B&Bのイベント内容をみれば、よしもとばなな角田光代など著名な作家から、ビジネス関係者まで、幅広くイベントに招待されている。


地方では、小さな書店がなくなり、大型チェーン書店が郊外に、駐車場を用意して店舗を構えている。かつての商店街は、今はシャッター街になっており、書店のみならず、様々な商店が店を閉じてきた。地方都市に、B&Bのような本屋の試みは難しい。


もちろん、その地方・地域独自の方法を、導入することで、本屋を展開すれば良いといえるかも知れない。


書籍という形態から見ると、モノとしての本と電子書籍に分けられるが、読者の都合から言えば、どちらも利用したい。


書棚と平台―出版流通というメディア

書棚と平台―出版流通というメディア


現在の、本の流通は、柴野京子『書棚と平台』(弘文堂,2009)に記述されているとおり、取次の支配下にある。


書物の環境論 (現代社会学ライブラリー4)

書物の環境論 (現代社会学ライブラリー4)


内沼氏は、取次という出版流通システムの外で、「本屋」を営んでいる。
内沼氏の斬新な企画力や、発想を直ちに実践する。本をとりまく環境を自ら変えて行く。今後を、注目したい。


本の未来をつくる仕事/仕事の未来をつくる本

本の未来をつくる仕事/仕事の未来をつくる本