17歳のための世界と日本の見方


松岡正剛帝塚山学院大学で「人間と文化」と題した講義を復元・編集したのが、『17歳のための世界と日本の見方』(春秋社、2006)*1であり、まずこちらを読了した。


「関係」と「編集」、「文化感覚距離」などの「ことば」を駆使して、世界の成り立ちの根底にある宗教の問題を解説している。ユダヤ教キリスト教イスラム教などの一神教と、仏教、儒教道教などの多神教を対比しながら、文化が構築されていくことの意味を「編集」の視点からみている。


空海の夢

空海の夢


書かれていることは、神話や物語の成り立ちや、それぞれの宗教の特徴を正剛流の切り口で、明快に説かれるのだが、そこから「知」だの「知識」だの、教養的な意味での、読書のための基本が分かる仕掛けになっている。しかし、そこから思想的な切り口や、「哲学」として抽出できる内容は率直に言って解からないのだ。普通は、著書の2〜3冊を読めば、だいたい思考の方法や思想の核にあたるものの見当がつく。しかし、松岡正剛の場合、読書を重ねても「核」がみえないのだ。読み違いでなければ、意図的に「核」を隠蔽しているとしか思えない。*2


花鳥風月の科学 (中公文庫)

花鳥風月の科学 (中公文庫)


松岡正剛の著書は、私にとって面白いというものではない。つまり刺激を受けないのだ。なるほど、広く多様な知見は得られるのだが、「それが何か?」という印象なのである。一言にしていえば、読書するために「参照する編集者」ということになろうか。


遊行の博物学―主と客の構造

遊行の博物学―主と客の構造

山水思想―もうひとつの日本

山水思想―もうひとつの日本

*1:ISBN:4393332652

*2:松岡正剛の位相から「百科全書派の知識人」と思えば理解できないこともない。