エドワード・ヤン(楊徳昌)を悼む 


今朝の「朝日新聞」の小さな記事で、エドワード・ヤンの死去を知る。享年59歳はあまりに若い。才能に恵まれた監督だけに惜しまれる。メディアが、大きく伝えることもなく、ひっそりと他界された台湾の映画監督について、弔辞にあたる「ことば」や作品解説もほとんどない。


エドワード・ヤンの恋愛時代 [DVD]

エドワード・ヤンの恋愛時代 [DVD]


以下、朝日新聞のサイトから引用する。

台湾の映画監督、エドワード・ヤンさん死去
エドワード・ヤンさん(楊徳昌=台湾の映画監督)はAP通信によると、6月29日、結腸がんによる合併症のため、米国カリフォルニア州ビバリーヒルズの自宅で死去、59歳。/ 「●嶺街(クーリンチェ、●は牛へんに古)少年殺人事件」や「エドワード・ヤンの恋愛時代」で知られ、イッセー尾形さんが出演した「ヤンヤン 夏の想い出」で00年のカンヌ国際映画祭の監督賞を受賞している。


これだけの記事ではあまりに淋しい。かつて「中華電影新世紀」の代表的旗手として、ホウ・シャオシェンと並び、『クーリンチェ少年殺人事件』(1991)で注目された。以後の作品は多くないが、『エドワード・ヤンの恋愛時代 』(1994)『カップルズ』(1996)『ヤンヤン 夏の想い出』(2000)などの作品を追憶する。孤独な少年と闇。経済成長期の青年たちの恋愛や葛藤。そして子供の眼からみる大人の世界。家族の関係を淡々と描いた『ヤンヤン 夏の想い出』はスタイルの転換期かと思えた。それが遺作となってしまった。とりとめもなく個々のシーンが交錯し、まとまらない。「未完の死」と一旦は考えたが一作づつ作風が微妙に異なることを思えば、『ヤンヤン 夏の想い出』が到達した静謐な世界といえなくもない。しかしながら無念の思いが強く残る。


ヤンヤン 夏の想い出 [DVD]

ヤンヤン 夏の想い出 [DVD]


ほとんど注目されることもなく、ひっそりと訃報が伝わるときの言い知れぬ悲しみ。一体、誰がエドワード・ヤンに注目したのか。それさえも忘れられようとしている。いまはただ、「エドワード・ヤン楊徳昌)」氏のご冥福を祈りたい。合掌。


カップルズ [DVD]

カップルズ [DVD]