M:i:III
『ミッション・インポッシブル』の第三作『M:i:III』は、娯楽映画としても、また、ヒッチコック的ムービーとしても十分に楽しめた。現役を引退し教官として勤務していたイーサン・ハント(トム・クルーズ)のもとに、元訓練生の救出命令がでる。まさに、ハントが、婚約者ジュリア(ミシェル・モナハン)との披露パーティの最中だった。
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デイヴィアン(フィリップ・シーモア・ホフマン)が所有する<ラビット・フット>を巡る争奪戦だが、ハントの私生活が今回、前面に出されること、また、最後まで、<ラビット・フット>とは何かが明らかにされない。<ラビット・フット>とは何であるかが問題ではなく、妻の救出が主題となる。つまり、ヒッチコックの<マクガフィン>を踏襲しているのだ。実際、『M:i:III』を観ながら、『北北西に進路を取れ』(1959)や『汚名』(1946)を連想した。
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ジェットコースタームービーでありながら、背景となるローマ・バチカンと上海の光景が素晴らしく、とりわけ上海近郊の古い川沿いの町並みは、美しい。そこをハントが全色力で疾走するシーンは圧巻であった。
冒頭に、デイヴィアンに捕らえられたイーサン・ハントが、妻を眼前に囮とされ、<ラビット・フット>の場所を言うよう強要されるクライマックスシーンを配し、やがてタイトルバックに移行する。この出だしも、映画に期待感を抱かせるとともに、ラストがあらかじめ示されることで、デイヴィアンが飛行機の中でハントを脅迫するせりふが不気味にリアルな雰囲気を帯びる。
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映画をシリーズ化することは、『007シリーズ』に似てしまうのだが、それはジョン・ウーが監督した『M:i-2』に現れていたけれど、『M:i:III』』はシリーズとしての楽しみに、ハントの家族を付加することで、夫婦であることがきわめて困難な時代に敢えて「夫婦愛」を正面に据えるという手法をとったことが、単なるアクションに終わっていないことを観客に見せてくれた。娯楽映画もつくり方次第で見栄えがすることの例証になった。
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映画のロケ地として、上海近くの漁村シータン(西塘)の景観は美しい。この場所を見るだけでもこの映画の存在価値があるが、根底はヒッチコック映画のリメイクにほかならない。