文藝・高橋源一郎


結婚が5回、離婚が4回。現代文士の鏡ともいうべき高橋源一郎。『文藝』2006年夏号*1は、その「高橋源一郎特集」を組んでいる。島田雅彦の「源ちゃんの人生」(p.70−71)が、面白い。

彼岸先生 (新潮文庫)

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明治、大正の昔から、文士は放蕩稼業一筋で、
自殺をしたり、心中したり、妻を交換したり、
革命なんかに手を染めたりと、
節操がなくても、愛嬌があって、
自慢じゃないけど、IQも高い、
計算しつくされた完璧なバカをやる。


こんな按配で、「源ちゃん」へのオマージュに満ちている。いかにもと思わせる詩で、高橋源一郎の人柄、才能に触れている。現代日本の文学者といえるのは、村上春樹高橋源一郎の二人だろう。村上春樹は健康オタク、妻=家族を大切にし、マイペースで文壇とは関係なく、仕事を続ける。一方の高橋源一郎は、いわば「最後の文士」に相応しい生き方をしている。人間的には、「源ちゃん」に魅力を感じる。村上春樹と直接話しをする機会があっても、楽しくないだろうと予測がつく。「源ちゃん」はどうだろうか。『文藝』では長女と対談をしている。その内容を読んでも実に楽しめる。


私生活

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例えば次のような会話。

高橋(父)  だって男の方は「生まれてきてすみません」の存在じゃない、DNA的に。もともと遺伝子的にいうと女性になり損ねたものが男性になったわけですから。
橋本(娘) そうやって深刻ぶってる男って、ホントにいやよね(笑)。


村上春樹高橋源一郎の共通点は。
二人とも芥川賞を受賞してないこと(パチパチ、拍手)。
二人とも、柴田元幸という翻訳家に評価されていること(この意味は大きい)。

翻訳教室

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現在連載中の「ニツポンの小説」の完結と単行本化が待ち遠しい。

一億三千万人のための小説教室 (岩波新書 新赤版 (786))

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再び、島田雅彦の「源ちゃんの人生」から引用。

文学史に一生捧げる覚悟はできている。
源ちゃん自身も律儀に文学史を生きている。
漱石も鴎外も、一葉も賢治も源ちゃんの隣人だ。

日本文学盛衰史 (講談社文庫)

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官能小説家 (朝日文庫)

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ミヤザワケンジ・グレーテストヒッツ

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