今夜はひとりぼっちかい?日本文学盛衰史戦後文学篇
- 作者: 高橋源一郎
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2018/08/23
- メディア: 単行本
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- 作者: 高橋源一郎
- 出版社/メーカー: 講談社
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高橋源一郎著『今夜はひとりぼっちかい?‐日本文学盛衰史戦後文学篇』(講談社,2018)は、十数年前の『日本文学盛衰史』(講談社,2001)の続編である。「戦後文学篇」の副題がある。
- 出版社/メーカー: ディメンション
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まず冒頭、映画・原一男監督『全身小説家』を学生に見せている。全身小説家とは、埴谷雄高が井上光晴を命名したのだが、ここで取り上げられる、戦後派作家及び周辺の批評家の名前が、カタカナで記述される。タケダ・タイジュンのように。
それを漢字に直すと、武田泰淳、野間宏、島尾敏雄、安岡章太郎、中川与一、宇野浩二、尾崎一雄、小林秀雄、原民喜、勝本清一郎、三好達治、唐木順三、丸山眞男、倉田百三、本多秋五、桑原武男、佐多稲子、平野謙、椎名麟三、徳田秋声、白井浩司、瀧口修造、石川達三、竹内好、梅崎春生、田村泰次郎、中島敦、保田與重郎、中野重治、安部昭、中村光夫、山本有三、亀井勝一郎、蓮田善明、杉浦民平、高見順、花田清輝、羽仁五郎、嘉村磯多、安部公房、林房雄、福田恒存、石坂洋二郎、藤枝静男、石川淳、堀口大學、牧野信一、織田作之助、伊藤整、武者小路実篤、室生犀星、檀一雄、小田切秀雄、上林暁、森有正、吉田健一、竹山道雄、田中秀光、米川正夫、渡辺一夫、中村真一郎、福永武彦、田宮寅彦、八木義徳、大岡昇平、磯田光一、河上徹太郎、堀田善衛、長谷川四郎・・・
戦後文学というより、戦前から生き残った文学者たち、評論家たちの、高橋源一郎の記憶にあるままお経のように唱えた名前である。
荒正人、遠藤周作、三島由紀夫、清岡卓行、寺田透、秋山駿、吉行淳之介、山川芳夫、中野好夫、坂口安吾、川崎長太郎、桶谷秀昭、村上一郎などを付け加えてもいいと思うが。他にも忘れているかも知れない。
「文学なんてもうありませんよ」
ロックンロール内田裕也、パンク、映画『SRサイタマののラッパー』から、石坂洋二郎の作品まで、ツイッター上で、ブンガクを語る。
ブンガクとは皆で読む場であった。みんなが参加して盛り上がる文脈=場があった。
3.11を「戦災に遇う」と表現するタカハシさん。
エピローグは、「なんでも政治的に受けとればいいというわけではない」と題され、以下の終焉を迎える。
福島第一原発の正門
正門まで10メートル。我々は立ち止った。「機械」をセットしたのは相棒だった。あちらからもこちらからも警官がやってきた。我々は正門を背に「機械」に向かって手をあげ、こういった。
「はい、笑って」
「おかしくないんだから笑えないんだけど」
「こうって、『いつかなりたいお金持ち〜!』」
「いやだね」
「じゃあピース?」
カシャッー
これって近代文学の終わり、かな。そういえば、柄谷行人は『近代文学の終わり』(インスプリクト、2005)で言及していた。
- 作者: 柄谷行人
- 出版社/メーカー: インスクリプト
- 発売日: 2005/11/01
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近代文学は、鴎外、漱石に始まり、荷風、芥川龍之介、太宰治等を経て現代文学・村上春樹に至る。そのあたりが教科書的・一般的認識であり、戦後文学について触れるひとが居なくなっている。
ツイッターやインスタなどのSNSメディアが、皆でかかわる場であり文脈となってしまった。ことの是非はさておき、喪失、あるいは忘却されることは歴史の必然だろうか。
■漱石関連本について
長谷川郁夫著『編集者漱石』(新潮社,2018)は、「編集」をキーワードにしているが、漱石本が多い中で久々の本格的・重厚な評伝となっている。本文二段組、354頁は読みがいがある。編集者・子規との関わりから叙述される。著者は小沢書店経営者として著名。
- 作者: 長谷川郁夫
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2018/06/29
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序文にて、「私がみるところ、日本の近代文学において最初の、そして最高の文学者=編集者は夏目漱石である」と宣言している。現在読書中であり、中島国彦『漱石の地図帳』(大修館書店,2018)および山本芳明『漱石の家計簿』(教育評論社,2018)と併せて覚書をUPしたい。
- 作者: 中島国彦
- 出版社/メーカー: 大修館書店
- 発売日: 2018/06/20
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- 作者: 山本芳明
- 出版社/メーカー: 教育評論社
- 発売日: 2018/04/20
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それにしても、いまなお漱石本が多いということは、戦後文学は読まれていないことの間接的証明だろうか。