THE有頂天ホテル
評判の『THE有頂天ホテル』を観た。三谷監督・三本目のフィルムは、三谷幸喜という人物が、大変よく分かる映画になっている。多数の人物を登場させ、細部が連鎖的に関連して、最後にはすべてが統合される。舞台劇を映画化するにあたり、映画脚本として注目を浴びた『12人の優しい日本人』(中原俊監督)がそうであった。
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『THE有頂天ホテル』には、ホテル・アヴァンティという限られた空間に25人のドラマがある。人物造型が極端にデフォルメされている。副支配人・役所広司と、客室係・松たか子を中心に、ホテルの客たち、国会議員・佐藤浩市、マン・オブ・ザ・イヤーの角野卓造・原田三枝子夫妻、過剰なまでに明暗が激しい大演歌歌手・西田敏行。役柄として面白いのは、地味な筆耕係を演じるオダギリジョーの律儀な振る舞いや嫌味な芸能プロ社長・唐沢寿明など、発想は面白いがヤリスギの感なきにしもあらず。まあ、三谷ドラマの常連、戸田恵子、香取慎吾、近藤芳正たちも出演しており、2時間16分を飽きさせない周到な運びだ。
映画に何を求めるか。コメディは、コメディとしての映画的磁場があり、三谷が敬愛するビリー・ワイルダーの「気のきいたエンディングは用意してあるのかね」という問いかけには、見事に答えている。観ることの悦楽が満ち満ちている楽しいフィルムだった。
女優として成長をみせてくれるのが、篠原涼子とYOUだった。篠原涼子演じるコールガールは、シャーリー・マクレーンを想起させるし、YOUのラストソングは心地よく響く。