現代思想の遭難者たち


現代思想の遭難者たち

現代思想の遭難者たち


いしいひさいち現代思想の遭難者たち』(講談社、2002.6)が、現代思想家をパロディとして紹介しつつ、すべての思想家について読む時間など持つことのできない一般の凡庸な市民である私にとって、マンガに付された註釈で必ずしも十分ではないけれど、一言にして思想家を言い得るための導きの本として、年末の大晦日にとりあげるにもっとも相応しい本。
いしい氏のアイロニカルなマンガにこそ、思想の真実は隠されている。


Ⅰ 超えゆく思想家たち
  ハイデガー
  フッサール
  ウィトゲンシュタイン
  カフカ
  ニーチェ
  マルクス
  フロイト
  ユング

Ⅱ 疾駆する思想家たち
 ・レヴィ=ストロース
  アルチュセール
  バルト
  ラカン
  フーコー
  ドゥルーズ
  レヴィナス
  デリダ

Ⅲ 彷徨いゆく思想家たち
  バタイユ
  ジンメル
  ベンヤミン
  アドルノ
  アレント
  ガダマー
 ・ハーバーマス
  ロールズ
 ・クリステヴァ

Ⅳ 一人ゆく思想家たち
  ホワイトヘッド
  バフチン
  バシュラール
  ポパー
  クーン
  クワイン
  メルロ=ポンティ
  ルカーチ
 ・エーコ


以上、34人のうち、2004年にジャック・デリダと、そしてこの本には取り上げられていないスーザン・ソンタグの二人が他界された。


34名のうち存命するのは、レヴィ=ストロースハーバーマスクリステヴァエーコの4名のみとなった。現代思想家としては、エドワード・サイードベネディクト・アンダーソンウォーラーステインゲーデルスラヴォイ・ジジェクソシュールベイトソンアントニオ・ネグリ、それにゴダールを追加した、『現代思想冒険者たち・増補版』が出版されるべきだろう。


それにしても、フロイトラカン的思想が、19世紀に成立した「小説」という概念を中心とする近代文学終焉のあとの、現代文学を解読するには有効であるようだ。たとえば、村上春樹は、フロイトラカン系学者ではなく、なぜユング派の河合隼雄に会いに行ったのか。なぜ、謎を残すような書き方をするのか。書かれていないことが解読の手がかりだとすれば、それは、ラカンの「シニフィアン」に鍵がありそうだ。


昨日も記したが、とりあえず、ラカンの『精神分析の四基本概念』を年越しに読むこと。


ジャック・ラカン 精神分析の四基本概念

ジャック・ラカン 精神分析の四基本概念