コルシア書店の仲間たち


コルシア書店の仲間たち (文春文庫)

コルシア書店の仲間たち (文春文庫)

コルシア・ディ・セルヴィ書店をめぐって、私たちは、ともするとそれを自分たちが求めている世界そのものであるかのように、あれこれと理想を思い描いた。・・・
それぞれが心のなかにある書店が微妙に違っているのを、若い私たちは無視して、いちずに前進しようとした。その相違が、人間のだれもが、究極においては生きなければならない孤独と隣あわせで、人それぞれ自分自身の孤独を確立しないかぎり、人生ははじまらないということを、すくなくとも私は、ながいこと理解できないでいた。若い日に思い描いたコルシア・ディ・セルヴィ書店を除々に失うことによって、私たちはすこしづつ、孤独が、かつて私たちを恐れさせたような荒野でないことを知ったように思う。
『コルシア書店の仲間たち』(文春文庫版、p232)