須賀敦子



須賀敦子(1929〜1998)の文章は美しい。
1990年に『ミラノ霧の風景』(白水社)が出版され、端正な日本語の美しい文体で、イタリア時代の交友について語るエッセイは、あたかも小説を読む感覚を味わうことになった。講談社エッセイ賞と女流文学賞を受賞したとき、作者は60歳を過ぎていた。遅い出発であった。


その後、
『コルシア書店の仲間たち』(白水社
ヴェネツィアの宿』(白水社
トリエステの坂道』(白水社
ユルスナールの靴』(白水社
など、イタリア時代の記憶を紡ぎだすように、次々と珠玉のエッセイ集を、刊行していった。5冊の著書を出版したところで、1998年、突然の他界。


10年未満の間、須賀敦子さんは疾走しつづけた。
私が須賀敦子さんを発見したのは、1998年の著者の死後であった。上記5冊を、98年9月から10月にかけて集中的に読むことになった。とくに、『コルシア書店の仲間たち』と『ヴェネツィアの宿』は、きわめて印象深かった。