肩書蒐集家


種村季弘氏の『贋物漫遊記』(ちくま文庫)*1の冒頭に「肩書蒐集家の悲哀」という文章がある。種村氏の肩書きは、ドイツ文学者、評論家、映画評論家、翻訳家、作家、劇作家、美術史家、マニエリスム研究家、吸血鬼研究家、神秘学研究家、××大学講師など多数ある。これらは、オマカセの結果という。

なかにはどうしても自分から名乗ってもらいたい、と食い下がる人もいる。待ってください、と私は言うのである。「死ぬまで待って下さい。死ぬ直前に自分から名乗ろうと思う肩書きがあります。もうちょっとの辛抱なのです。でもここだけの話、あなたにだけは
教えときましょう。それは、肩書蒐集家、というのです」
(1983年版、p9)


大エンサイクロペディスト種村季弘氏に相応しいのが、「肩書蒐集家」というわけです。いかにも、この人らしいアイロニカルな表現であった。


ザッヘル=マゾッホの世界 (平凡社ライブラリー)

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