翻訳・新訳本補遺


12月19日の拙ブログで取り上げた「翻訳・新訳本」に漏れがあった。以下、補遺として記しておく。

ラシーヌ論

ラシーヌ論


ドゥルーズ『シネマ2』(法制大学出版)とともに、長く翻訳が待たれた本として、ロラン・バルトラシーヌ論』(みすず書房)があげられる。日本人にとって、「ラシーヌ」はシェイクスピアほどの馴染みはないけれど、既成の批評を覆すロラン・バルトの真骨頂が窺われる刮目すべき本。翻訳者・渡辺守章による100頁以上の長い解説が付されている。『ラシーヌ論』の衝撃の大きさを象徴している。読書中!


いいなづけ 上 (河出文庫)

いいなづけ 上 (河出文庫)

いいなづけ 中 (河出文庫)

いいなづけ 中 (河出文庫)


いまひとつは、イタリアの作家マンゾーニ『いいなづけ』(河出文庫)の翻訳が文庫出版されたこと。イタリア文学というのは、英米文学やロシア人学、あるはラテン文学の紹介に比べても、その数が少ない。須賀敦子さんが生きておられたら、マンゾーニに関する解説の一つも読めたであろうことを思うと、残念ではある。


ハイデッガー カッセル講演 (平凡社ライブラリー)

ハイデッガー カッセル講演 (平凡社ライブラリー)


ハイデッガーほか著/後藤嘉也訳『ハイデッガー カッセル講演』(平凡社ライブラリー)は、『存在と時間』の生成にかかわる講演録。木田元の解説あり。これも必読本。


海に住む少女 (光文社古典新訳文庫)

海に住む少女 (光文社古典新訳文庫)


大事な一冊を忘れるところだった。シュペルヴィエル著/永田千奈訳『海に住む少女』(光文社古典新訳文庫)は、不思議な味わいを持つ大人のメルヘン。小池昌代さんが「朝日新聞」の「今年の収穫三冊」に入れていた。バーバラ・ピム著/小野寺健訳『秋の四重奏』(みすず書房)も三冊に入っていた。「余韻は思いの外、深い」というコメントが気になる。


秋の四重奏 (lettres)

秋の四重奏 (lettres)


最後に、加藤周一が12月26日「朝日新聞」掲載の「夕陽妄語」で触れられていた、バルバラ・吉田=クラフトさんのこと。『日本文学の光と影』(藤原書店)は、日本近代文学を外国人の視点から、予想外の斬新さが提示されている貴重な翻訳本。なお、バルバラ・吉田=クラフトさんは、吉田秀和氏の夫人であった。本日入手。


日本文学の光と影―荷風・花袋・谷崎・川端

日本文学の光と影―荷風・花袋・谷崎・川端


2006年はこれら優れた翻訳本が刊行された年でもあったわけだ。前回分と以上の未読本が読めるのは、年末・年始になる。さて、どれだけ読めるかな?