2006年書物の収穫
【小説】
- 作者: 川上弘美
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2006/10
- メディア: 単行本
- 購入: 2人 クリック: 25回
- この商品を含むブログ (171件) を見る
短い文章で綴られる簡潔な文体。女性の生理的な生なましさが、今生と他生(現実と彼岸)との世界のあわいを官能的に捉えた今年一番の収穫。傑作である。生活者の視点や、母と娘との関係。子供を産む体験の作品化など、女性ならではの不思議に濃密な空間、雰囲気。
- 作者: 中島京子
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2006/05
- メディア: 単行本
- クリック: 9回
- この商品を含むブログ (38件) を見る
【翻訳】
- ジル・ドゥルーズ/宇野邦一ほか訳『シネマ2時間イメージ』(法政大学出版局)
- スコット・フィッツジェラルド/村上春樹訳『グレート・ギャツビー』(中央公論社)
【批評】
- 辺見庸『自分自身への審問 』(毎日新聞社)
- 内田樹『私家版・ユダヤ文化論』(文春新書)
- 梅田望夫『ウェブ進化論』(ちくま新書)
- 柄谷行人『世界共和国へ』(岩波新書)
- 丸山眞男『丸山眞男回顧談』(岩波書店)
- 出口裕弘『坂口安吾 百歳の異端児』(新潮社)
- 斉藤環『生き延びるためのラカン』(バジリコ)
【対談・エッセイ・紀行】
【旧刊・復刊】
- 森本啓『谷間の女たち』(新潮社,1989)
- 押井守『立喰師列伝』(角川書店,2004)
- 小山清『小さな町』(みすず書房,2006)
- 福田恆存『私の幸福論』(ちくま文庫,1998)
- 岡松和夫『断弦』(文藝春秋, 1993)
中島京子以外は、拙ブログで取り上げている。中島京子は旧作の『FUTON』『さよなら、コタツ』『イトウの恋』、それに最新刊『均ちゃんの失踪』を併せて取り上げるつもりだったが、すべてを読了することができなかった。しかし、中島京子は今もっとも注目している女性作家の一人である。彼女の才気は只者ではない。
- 作者: 中島京子
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2006/11/10
- メディア: 単行本
- クリック: 4回
- この商品を含むブログ (22件) を見る
バルバラ・吉田=クラフト著『日本文学の光と影』(藤原書店)の内、「永井荷風(一)」「永井荷風(二)」と「エッセーと随筆」の三篇を読む。ドイツへの日本文学の翻訳紹介という著者の立場から、たいへん読みやすく分かりやすい。荷風の近代文学史上の位置付けも正当であり、
彼(荷風)の著作物の中でも、彼自身にとって最も重要なのは、長短の小説でもなければエッセーや詩のたぐいでもなく、この自分の日記だったと思われる。(p.79)
- 作者: バルバラ吉田=クラフト,Barbara Yoshida‐Krafft,吉田秀和,濱川祥枝
- 出版社/メーカー: 藤原書店
- 発売日: 2006/11
- メディア: 単行本
- クリック: 10回
- この商品を含むブログ (6件) を見る
荷風がこの日記に誌しているものは、決してその時々の気分などではなく、綿密な計画の産物である。(p.89)
と的確に押さえている。
さて、『日本文学の光と影』を読みながら年越しだ。