2006年書物の収穫


【小説】

真鶴

真鶴


短い文章で綴られる簡潔な文体。女性の生理的な生なましさが、今生と他生(現実と彼岸)との世界のあわいを官能的に捉えた今年一番の収穫。傑作である。生活者の視点や、母と娘との関係。子供を産む体験の作品化など、女性ならではの不思議に濃密な空間、雰囲気。

ツアー1989

ツアー1989


【翻訳】


【批評】


【対談・エッセイ・紀行】


【旧刊・復刊】

中島京子以外は、拙ブログで取り上げている。中島京子は旧作の『FUTON』『さよなら、コタツ』『イトウの恋』、それに最新刊『均ちゃんの失踪』を併せて取り上げるつもりだったが、すべてを読了することができなかった。しかし、中島京子は今もっとも注目している女性作家の一人である。彼女の才気は只者ではない。


均ちゃんの失踪

均ちゃんの失踪


バルバラ・吉田=クラフト著『日本文学の光と影』(藤原書店)の内、「永井荷風(一)」「永井荷風(二)」と「エッセーと随筆」の三篇を読む。ドイツへの日本文学の翻訳紹介という著者の立場から、たいへん読みやすく分かりやすい。荷風近代文学史上の位置付けも正当であり、


彼(荷風)の著作物の中でも、彼自身にとって最も重要なのは、長短の小説でもなければエッセーや詩のたぐいでもなく、この自分の日記だったと思われる。(p.79)

日本文学の光と影―荷風・花袋・谷崎・川端

日本文学の光と影―荷風・花袋・谷崎・川端

荷風がこの日記に誌しているものは、決してその時々の気分などではなく、綿密な計画の産物である。(p.89)


と的確に押さえている。
さて、『日本文学の光と影』を読みながら年越しだ。