みすず読書アンケート2015


毎年この時期の恒例。みすず書房『みすず2015年1・2月』(みすず書房,2015.2)には、前年度の読書から5点以内を回答するもので、読書家、書物愛好家にとって見逃せないアンケートである。


5人から推された図書が1冊、4人からは2冊。それぞれ以下に*1書影を示す。


互盛央『言語起源論の系譜』講談社,2014  5人


言語起源論の系譜

言語起源論の系譜


加藤典洋『人類が永遠に続くものではないとしたら』新潮社,2014  4人


人類が永遠に続くのではないとしたら

人類が永遠に続くのではないとしたら


富士川義之『ある文人学者の肖像 評伝・富士川英郎新書館,2014 4人



以下は、3名から推挙された図書7冊。

グレン・グリーンウォルド著,田口俊樹[ほか]訳『暴露ースノーデンが私に託したファイル』新潮社,2014


暴露:スノーデンが私に託したファイル

暴露:スノーデンが私に託したファイル


長谷川郁夫『吉田健一』新潮社,2014


吉田健一

吉田健一


ジョルジョ・アガンベン著,上村忠男・太田綾子訳『いと高き貧しさ 修道院規則と生の形式』みすず,2014

蓮實重彦『「ボヴァリー夫人」論』筑摩書房,2014

松浦寿輝『明治の表象空間』新潮社,2014


明治の表象空間

明治の表象空間


吉川浩満『理不尽な進化』朝日出版社,2014


理不尽な進化: 遺伝子と運のあいだ

理不尽な進化: 遺伝子と運のあいだ


山田宏一蓮實重彦トリュフォー最後のインタビュー』平凡社,2014


この7冊の内、3冊は読了または、半分以上読んでいる。蓮實重彦氏の2冊は拙ブログで昨年とりあげたので、省略する。


栗田彬氏が挙げている、漱石『趣味の遺伝』(明治39年)は、メタ戦争小説であるとの解釈は、新鮮であった。


同じ栗原氏が、アガンベンの『いと高き貧しさ』について、


いと高き貧しさ――修道院規則と生の形式

いと高き貧しさ――修道院規則と生の形式

聖フランチェスコら托鉢修道者に「所有」せず、法権利の外で「使用」して生きる「生の形式」・政治の身振りを探究して、現代の大量消費社会に生き方の問いをつきつける。(p108)


と評価している。聖フランチェスコに関して、アッシジを訪れたことがあり、清貧な生活ぶりに驚いたものだが、中世的な禁欲生活が、大量消費社会への、直接的な批判に直結させることは難しいと云うのが、私の思いだ。


印象に残ったことばとして、勝俣誠氏は、恐るべき真実を突いている。

教養とは戦争しないことだと実感した年であった。社会科学でモノゴトを考えてきた私にとって、国内的には格差を放置し、対外的には自国の自慢話に精力的になる政治が続いたら、社会は一体どこへ行きつくのか心配になった。(p111)

21世紀の資本

21世紀の資本


そこで、トマ・ピケティ『21世紀の資本』(みすず書房,2014)を紹介している。本書の出版は、12月であり、アンケート締め切りからいえば、2名が推薦しており、来年の収穫に向けての予告となっている。実際、今年に入り、ピケティの講義が「Eテレ」で6回に渡り放映されているところであり、また、1月末には来日し、講演をしている。


大切なのは、こどもたちを飢えさせないことと、「子供の教育」である。

*1:2015年2月3日追加修正しました。重要な本を2冊追加します。