みすず読書アンケート2018


みすず書房から毎年発行されている、『みすず』2018年1・2月号は、読書アンケート特集である。毎年楽しみにしているが、今年も早速、確認してみたい。「みすず読書アンケート」の読み方として、誰がどんな本を選出しているかと、自身が読んだ本が取り上げられているかどうかになるだろう。



國分功一郎『中動態の世界』(医学書院,2017)が五人の評者によって選出されている。突出して5名であり、他はいかに数多くの書物が刊行され、関心を抱く分野が異なると収穫図書が多様化することが証明されている。


バテレンの世紀

バテレンの世紀


小生が読み拙ブログで取り上げた図書は、渡辺京二バテレンの世紀』(新潮社,2017)が平尾隆弘氏により選出されていた。



アンケートで回答され選出されている本は、あまりにも膨大な書物なので、自分の関心ある領域で気になった本を見てみたい。
回答者別に見てみたい。


子規の音

子規の音


下士朗は、森まゆみ『子規の音』(新潮社,2017)と多和田葉子編『カフカ』(集英社文庫,2015)を選出・言及している。


負債論 貨幣と暴力の5000年

負債論 貨幣と暴力の5000年


宇野邦一は、グレーバー『負債論』(以文社,2017)、ロベルト・ボラーニョ『チリ夜想曲』(白水社,2017)をあげている。



鈴木一誌は、三中信宏『思考の体系学』(春秋社,2017)をあげており、これは小生も購入した。<分類がイデオロギーでもある事情を教えてくれる>と記している。


チリ夜想曲 (ボラーニョ・コレクション)

チリ夜想曲 (ボラーニョ・コレクション)


ロベルト・ボラーニョ『チリ夜想曲』(白水社,2017)は、岡田秀則氏も言及している。



ブレイディみかこ『子どもたちの階級闘争』(みすず書房,2017)(第16回新潮ドキュメント賞受賞)も見逃すもことのできないレポートだ。



それにしても、ブレイディみかこ『子どもたちの階級闘争』と『労働者階級の反乱』(光文社新書,2017)、『花の命はノー・フューチャー』(ちくま文庫,2017)の三冊が気になった。専門知が機能しなくなった時代、イギリスの保育現場からの実践的リポートが説得力を持つということだろうか。


文学問題(F+f)+

文学問題(F+f)+


読書アンケートに選出されていない、気になる本がある。山本貴光『文学問題(F+f)+』(幻虚書房,2017)である。*1

漱石『文学論』を本格的に読み解き、更に、先に進もうとする試みであり、文学理論上見逃すことができない書籍である。


文学論〈上〉 (岩波文庫)

文学論〈上〉 (岩波文庫)

文学論〈下〉 (岩波文庫)

文学論〈下〉 (岩波文庫)

*1:三中信宏氏は、

<※山本貴光さんの『文学問題(F+f)+』は評者の誰かが挙げていたと思ったけど……>

と言及されていますが、漠然と「誰かが」ではなく、『みすず』該当頁を指摘して戴きたいものです。